第6話:暗殺

「くっくっくっ、俺達に逆らってただですむと思っていたのか」

「借金を払ったからと言って逃げられるわけがないだろう、馬鹿が」

「お前達はダンジョンで行方不明になるんだよ」

「リンメイは裏売春宿に叩き売ってあげますわ」

「カエサルは私がここで殺してあげるから、感謝しなさい」


 勇者パーティーの屑共、フィロイ、ランガイ、ギルモア、ネスエナ、ジルラルがカエサルとリンメイを殺そうと待ち構えていた。

 ネヴィナは黙っているが、前回の遣り口を考えれば一番性格が悪いかもしれない。

 カエサルとリンメイが、浅階層の素材を大量に売って得た金で借金を返したら、闇討ちに来る事は予測できていた。

 ここ数日の鍛錬で、リンメイの実力は飛び抜けたモノになったいる。

 リンメイはもうカエサルの支援がなくても勇者パーティー以上の実力者だ。


「リンメイ、人間を殺せるかい、できないのなら俺がやってあげるよ」


「大丈夫、こんな連中を生かしていたら、これからも苦しむ人が生まれてしまう。

 この手を穢しても、断じてここで斃します」


「はぁ、わっははは、なにっ言ってやがる、卑しい獣人が人間ずらし、ウッぐっわ」


 リンメイが目にも止まらぬ速さで動き、魔爪斬を使って勇者フィロイの首を一撃で刎ねたが、それで終わりではなかった。

 突出した俊敏性を生かして、そのままネスエナ、ジルラル、ネヴィナの首を跳ね飛ばした。

 盾役で重装備のランガイと、獣人戦士で俊敏性に優れたギルモアは、わずかにリンメイの動きに反応して急所を守った。


 カエサルの特訓を受けたリンメイは、決して無理はしない。

 確実に斃せる相手から殺し、他は動きで翻弄してから斃す。

 最初にフィロイを殺されたランガイとギルモアは、長年の役割とで得た条件反射と本能で急所を庇って命を長らえたが、それも短い時間でしかなかった。

 リンメイの変幻自在の動きについけなくなったギルモアは、背後から心臓を一突きされて絶命した。


 以前のリンメイなら斃せなかった完全鎧を装備したランガイも、カエサルからもらった魔力回復飴を舐める事で、常時魔爪斬を使えるようになっていた。

 その破壊力を利用して、比較的装甲の薄い関節部を切り裂き、徐々に手足を跳ね飛ばしていった。


「よくやったね、リンメイ、これで君は自由だと。

 遺体の始末は俺が最深部に捨ててくる。

 そうすればモンスターに喰われるかダンジョンに吸収されて証拠は残らない。

 リンメイはその間にこの素材を売ってきてくれ」


 カエサルはリンメイの訓練のために狩った、現役冒険者が辿り着けていない二十階層以上の素材を渡した。

 これをリンメイがギルドに売却すれば、もう誰もリンメイを排除できない。

 そうなればもうカエサルが助ける必要などない。

 カエサルは、他にも不幸な立場にいる人が沢山いると考え、ここでリンメイと別れる事にしていたのだ。

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転生魔術師は実力を隠していたので、無能と謗られて勇者パーティーを追放されてしまい、困っていた猫獣人を一人前に育てる事にしました。 克全 @dokatu

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