第18話 霊斗のイタズラ

「如月、久しぶり」


「小僧…。久しぶりだな。その小娘はこの前のサキュバスか?」


「うん!覚えててくれたんだね!」


「1回きさらぎ駅にきたものの魔力は忘れぬ。して、何のようだ?」


「頼みがあってさ」



霊斗と天音は、美羽を遠くから眺める如月を前に全力で頭を下げる



「夜斗にナイトメア・テラーをかけてくれ!」


「却下だ馬鹿者。正当な理由なく主に楯突く訳には行かぬ」


「ま、待ってくれ!理由ならある!」


「…ほう?」


「ほ、ほら…夜斗が怖がってることをしっとけば、助けられるから…。私たちが夜斗に助けられてばかりだし…?」


「…そういうことにしておいてやる」



如月は夜斗に渡された端末の録音を切り、歩き出した

夜斗から身を隠し、呼吸を整える



(邪気開放。真髄、展開)



如月は対象を夜斗に絞り、霊力を向けた

夜斗が使ったものと同じほどの力だが、如月からしてみれば1割にも満たない







何も起きない

そう、何も起きないのだ

夜斗が如月に歩み寄り、掴みかかる



「如月、今何をした?」


「緋月に頼まれた。お前の恐怖を知り、いざというときに助けるためにと」


「余計なことをするな」



夜斗は如月から手を離し、マルチスコープで見つけた霊斗と天音に目を向ける

ただそれだけだ。霊斗や天音に怒るでも話しかけるでもなく、ただ歩き去っていく



「なんだよー、如月。効果ないじゃんか」


「やっぱり死神には効かないのかな?」


「いや…違う。あれは…あの、反応は…」



如月は呟く

2人は驚き、罪悪感に満ちた顔を見せた



「あれは、もう既に最悪の事態に遭遇した後の反応だ」








夜斗は歩く

美羽と鏡花を待つための喫茶店の前で、壁に手をついて荒い息をした



(危なかった…!)



如月の異能・【真髄エッセンス

あれは2通りの使い方がある

1つは霊斗たちが見た夢、つまりは悪夢を見せる方法

もう1つは、霊力を流し込まれた当人の封じられた記憶を見る方法

2つ目に関しては如月も知らない、応用の1つ

しかし先程のソレは、応用の使い方だった



(無意識に使ったのか…!)



夜斗は店内に入り、席に座り天井を見上げる

そして、如月が見ようとした記憶を掘り起こそうとしてやめた



(頭が痛い…。何かが、引っかかる…。奏音のことか?まさか、あの時の…。痛っ…)



夜斗は考えるのをやめ、窓の外を見た

手を降る鏡花と、一礼する美羽を見ながら、ふと声が聞こえた気がした



『夜斗は、もう守れてるんだよ。あの子たちを』

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多角関係の彼らは月を見る 本条真司 @0054823

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