第17話
――夢だと思った。夢魔だからこそ、こんな幸せなことは夢でしか起きないと
――彼は、私を見ていない。そう思ってたからこそ、こんな悪夢を見てしまった
――けど、もうそんな心配はしない。私が、彼の…緋月霊斗の彼女なんだから!
「うっさいぞ天音。惚気は程々にしろリア充め」
「心を読むなぁぁぁぁ!!」
「がなりたてるなうるさい…。早く課題をやれ、天音」
「うぅ…。なんでこんなの私が…」
「おめーが暴走させたからだよ!入社で話通してやったんだから感謝こそされても怒られる道理はねぇ!」
夜斗は狭い部屋の中で叫んだ
目の前にいる天音がやっているのは筆記テストだ。とはいえ、難しいものではなく一般常識の数々
今回の事件、夜斗は夜美に報告する際に完全に嘘をついた
天音の力試しをするためだと説明したのだ
そのため正規のテストを行うように指示が出た。ちなみに霊斗と天音には隠しているものの、夜斗は反省文をかなり書かされたのだ
「ったく…。まぁけど、如月ノ真髄使ったのは悪かったと思ってるよ。すまん」
「すまんで済んだら警察いらないし!ほんっっっとに怖かったんだからねあれ!霊くん失うのだけは嫌なの!」
「う…わかってるよ。威力調整ミスったんだ…」
珍しく沈む夜斗
天音はそんな夜斗を見たことがない。そのため、少し心配しようとしてやめた
――そんな義理、ないよね
「聞こえてんだよ。まぁいい…」
今日の夜斗は不思議と優しげだ
本気で悪いことをしたと思っているのだろう
そしてドアを開けて入ってきた美羽が夜斗の隣に立つ
その役割は天音にはわからなかった
数分後、不意に夜斗が天音に声をかける
「…霊斗と付き合えてよかったな」
「うん!その、ナイトメア…テラー?もちょっと役に立ったよ。チョー怖かったけどね!」
「うぐ…素直に喜べん…」
「喧嘩してばっかだなお前ら…」
「霊斗…」「霊くん!」
飲み物を持った霊斗がドアを開け、部屋に入った
そして夜斗と天音にお茶を渡す
ただし夜斗には鳩尾に向かって全力投球だ
「ふぐぉぉぉ…!」
「ったく…。俺がお前を失うのを怖がってるみたいじゃねぇか…」
「霊くんは多分、周りの人がいなくなるのが怖いってことじゃないかな?夜斗と私とレインちゃん…全員、幼馴染みたいなものでしょ?」
「…夜斗もぉ?レインは従姉だし天音は自他ともに認める幼馴染で愛する人だけど」
「傷つくぞ流石に。あとここで惚気るな、仕事中だぞ。…けどまぁ、俺もお前ら失うのは嫌だな…」
「おっ?あの夜斗がデレ期?これはこれは…霊くん、ちょっとレアじゃない?」
「相当レアだな。けど俺らからしたらあんまレアでもないが…むしろ気色悪いまである」
「わぉ…ストレートだね。けど…否定はできないかな!」
「ああああああ!おい美羽!こいつの課題増やせ!覚悟しろよ、天音…」
「あああ待って!ごめんなさいごめんなさい!真面目にやるからそれだけはぁぁぁぁ!」
「…騒がしい人たちですね」
夜斗の隣に立って監督役を手伝っていた美羽は笑い、釣られて全員が笑った
その幸せそうな笑い声は、外まで響いていく
「天音が失敗したか。かくなる上は…私自ら…」
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