スミレの花言葉

起きると朝九時を回っていて、家族は全員起きていた。

昨日帰ってきた時はみんな寝てしまっていたが、今日はみんな家にいる。

「おはよう。」

「おはよう。」

真っ先に返してくれたのは母だった。

「昨日の花火綺麗だったわね。」

正直、亜門と瑠奈のに夢中で花火なんてまともに見ていない。

「うん。ママひとりで行ったの?」

「ううん。パパと。」

いい年して両親は仲が良くて微笑ましい。

「美羽は?誰と行ったの?」

兄の蒼翔が乱入してきた。

「あっくんと春馬…じゃなくて春馬と。」

「二人で!?」

「そう。あっくんクラスの女の子に誘われちゃって。」

「モテモテだなあ、神奈くん。」

「かっこいいわよね。顔も整っていて。」

美羽は一旦部屋に戻った。

携帯電話のイルミネーションが点滅している。

亜門からのメールだ。

《ダンスの練習中!めちゃくちゃハードだけど明後日は絶対成功させます!》

このメールのアプリは返信の代わりにコメントをする。

《パラダイス祭楽しみにしてる♪絶対見に行くから頑張って!》

美羽がコメントをすると、春馬からもコメントが来てコメント数は二件になった。

「美羽~。」

一階から母に呼ばれた。

美羽は階段を駆け下りてリビングに向かう。

「久しぶりにおつかい行ってきて。」

「うん。いいよ。」

母は買うものが書かれたメモ用紙と二千円を差し出してきた。

「このコーヒーは西園寺くんの家の前のね。それ以外はスーパーで。」

「わかった。」

「俺も行く。」

蒼翔だ。


外に出ると日はあまり出てないのにかなり蒸し暑い。

「美羽、西園寺くんとなんかあった?」

「なにかって?」

「花火大会で二人っきりになってなにもないわけないだろ。」

「なんもない。」

「嘘だな。」

「嘘じゃない。てかそれ言うためにわざわざついてきたの?」

蒼翔は全く信じてくれない。

「噂をすれば…」

蒼翔はそう言ったが美羽は信じなかった。

ここは病院の前だ。

「本当だよ。」

美羽が顔を上げると数メートル先の入り口から出てくる春馬と春馬の母が見える。

「春馬!?本当だ。」

声を掛けたいと思ったが、すぐに車に乗り込んでしまったため後でメールすることにした。

「お母さんの体調悪いんじゃない?」

「そうなのかな。」

「西園寺くん家ここでしょ。」

もう、コーヒー屋に着いた。

コーヒー屋の向かい、薄いピンク色の一軒家で、大きな庭とガレージが見える。玄関にはダンボールが積み上がっていた。

「そういえばさ、この前学校行くときに西園寺くんのお母さんが男の子と歩いてるの見たよ。」

「誰?春馬じゃなくて?それともあっくん?」

とは言ったが、亜門と春馬の母が一緒にいるのもおかしな話だ。

「うん。西園寺くんと神奈くんではないよ。」

少し気になるが、蒼翔の見間違いだろう。親戚かもしれない。

蒼翔と美羽はお目当てのコーヒーを買って帰った。

家に帰るとすぐに部屋に戻い、携帯電話を見る。

亜門から一件、メールが来ている。

《美羽、春馬、速報です!ダンス教室にジェイスターの唐島祐二が来てる。》

「えっ、嘘…。」

美羽は速攻コメントする。

《凄い!すごすぎる!明後日いいところ見せな!》

ジェイスターは日本では誰もが知っている有名なアイドル事務所で、海外でも人気がある。

中でも、唐島祐二は人気のメンバーだった。

ふと、さっきの春馬のことを思い出してメールしてみる。

《今日、春馬が病院から出てくるところ見かけたよ。》

返信はすぐに来た。

《母さんの具合が悪くて。でも今日薬もらってたから心配しないで。》

やっぱりお母さん体調悪いのか。

春馬は心配しなくていいと言うがそれでも心配だ。

今日は明日の作文会のために早く寝ることにした。

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花詩 加藤 萌宙 @moekyunO711

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