こちらの作品で描かれるのは、若者たちのありふれた日常風景です。
にもかかわらず、格調高い美しい文体であるためか、文章を追うあいだ、終始その美しさに引き込まれ、いっきに最後まで読んでしまい、読後には線香花火が落ちたときのような寂しさすら感じるほどで、また、物語を充分に咀嚼できていないためか、喉に魚の小骨でも引っ掛かっているような感覚もあり、気が付けば、二度三度と繰り返し読んでいました。
天体の知識。文学評論。人間自体への哲学的な考察。などなど、作中つづられる様々な要素は、どれも興味深くて、知的興奮を覚えました。またそれらのイメージが、ときにはっきりと、またときには迂遠に対応しているようで、読むたびに違った発見がありました。
含みというのか、深みというのか、まさにこれが、文学ひいては小説というものの面白さなのではないかと思います。
と、いろいろと書きましたが、作中の若者たちのやりとりは現代的で、ただそれだけでもすごく雰囲気があって、楽しめる物語ですので、誰でも楽しめる作品なのではないかと思います。
本当に素晴らしい名作と思います。ぜひ読んでみてください。