「残怨飛沫感染…」

低迷アクション

第1話


 「やっぱり、マスクじゃぁ、何にも防げねぇのな…」


友人の“G”は、ゆっくりと呟く。彼と“J”は

度を越えた“サバゲーマニア”…法律により禁止されている廃墟や被災地跡などで

BB弾遊びをする“非常識な連中”…


そんな彼等が現在の“流行り病”を気にする筈もなく、外出を繰り返していた時の話だと言う。


「なぁ、週末は樹海でドンパチしねぇか?」


JがGへ提案した。何でもサバゲの先人達は樹海と言う広大な戦場でのゲームを楽しんでいたとの事…今は外出自粛の時代、梟を見に来る奴も、自殺者も来ないんじゃね?と

言う謎理論でGを説得する。


「せっかくだから、仲間誘って、盛り上がりてぇから、今回は偵察って事でさ!」


自殺の名所と言う認識に、後ろめたさはあったが“先人達”を言い訳に、彼の提案を承諾した。



 「おい、見ろよ!」


迷彩服とマスク(ガスマスク風のマスク、彼曰く、流行り病対策との事)

を装備したJが一際大きい大木をライトで照らす。


人気のない一般道から外れ、自殺防止看板を蹴り上げ、闇の中を進む事数分…


Jが見つけたのは、輪っかの付いた縄…ゲームは夜にやるため、下見も夜…一般道の木に

結んだ命綱はJの背中に巻いてあるので、迷う心配はない…それにしても…


「マジ縁起悪いな、これ…首吊り用?」


Gの問いかけに、Jは答えず、周りを物色し始める。やがて、素っ頓狂な声と共に薄汚れたバッグを頭上に掲げる。


「ハハ、中、なに…」


声が途中で途切れ、激しく咳き込む音が響く。ライトで照らすと、バッグを放り投げたJが無言で立ち尽くした後、森の奥に向かって走り出す様子が映った。


「何処に行く?」


Jの返事はない。よく見れば、彼の進んだ地面に、命綱であるロープが転がっている。


「ヤベェよ…」


寒気を覚えたGは肩に吊るした銃を構え、Jを追う。進む先には、Jの自慢の銃に、ヘルメットと言った装備品が転がり、体を軽くしてる様子だ。


この追跡は、迷彩服を脱いだ、上裸のJが先程の輪っか付きの縄を握っているのを

見て、慌てたGが剥き出しの背中に向けて、発砲し、Jが振り返る所で

終わった。


「アイツの話では、バッグから粉みたいのが降って、その後、背中に痛みが走るまで、何にも覚えてないらしい。でも、俺は振り返った奴の顔をしっかり見た…


しわくちゃで骨ばった、女の顔がアイツの顔に貼り憑いてたように見えた。一瞬の事だけどな…」


やっぱり、マスクじゃ(以下略)と、彼は、もう一度呟いた…(終)

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「残怨飛沫感染…」 低迷アクション @0516001a

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