社会適合者という病

結城彼方

社会適合者という病

 社会適合者は、適合者であるが故に、ある病にかかっていることがある。その病とは社会適合者症である。(以下、適合者症と呼称する。)症状は社会不適合者を責める、批判する、差別する。というものであり、具体的には、社会不適合者の努力不足、不適合性、才能の無さ、犯した罪、病、障害等を責めたりするものである。だが、それらは本来、責められるようなものなのだろうか?


 多くの適合者症患者は、不適合者の努力不足を責めるが、そもそも努力ができるという能力も才能の1つであり、その才能に恵まれるかは運次第である。そして、自分の能力で社会に適合できるかどうか、適合できるような時代に生まれるかどうか、これもまた運である。エミリー・ディキンソン、グレゴール・ヨハン・メンデル、フランツ・シューベルト等々、適合できる時代に生まれなかったが故に、生前、評価されなかった偉人は数多くいる。


 犯罪者に関してはどうだろう?これもまた、多くの適合者症患者に責められる。だが、よく考えてみて欲しい。


「もしも自分が犯罪者の立場だったら、同じように罪を犯さなかっただろうか?」


このように問うと、多くの適合者症患者が言う。


「自分は決して罪は犯さない。」


と。だが、彼らが焦点を当てているのは、犯罪者のほんの一部でしかないため、以下のように考えているのだ。


「もしも自分が(今の知能のまま)犯罪者の立場だったら、同じように罪は犯さない。」


これではあまりにも焦点を当てる範囲が狭すぎる。本来はこう考えるべきだ。


「もしも自分が犯罪者の立場だったら(すなわち犯罪者と同じように、親から性的虐待を受けていた、十分な教育を受けることができなかった、飢えていた等、自分とは異なる生い立ちをたどり、今現在持ち合わせている知能を得る事が出来ず、犯罪者と同じ知能になっていたとしたら)同じように罪を犯さなかっただろうか?」


こう考えれば答えが変わるのではないだろうか?少なくとも、


「自分は決して罪は犯さない。」


などと軽々しく馬鹿丸出しの発言はできなくなり、もう少しモノを考えて発言するようになるはずだ。


 病、障害に関してはどうだろう?ADHD、ASD、HSP、アダルトチルドレン、うつ病、全般性不安障害等々。社会不適合者へとつながる病や障害は多くある。だが、これらも無理解な適合者症患者に責められることが多々ある。よく言われるのが


「気の持ちようだ。気のせいだ。」


「努力不足。」


「考え過ぎ。」


「記載し難い差別的言動。」


である。最近では多少理解が進んできたとはいえ、社会全体ではこのような状況下にある人々を救うようなセーフティネットは十分に整っていない。その理由は多くの適合者症患者がこう考えているからだ。


「自分はそうはならない。」


と。だが、病や障害は人種差別もしなければ宗教差別、性差別もしない。ある意味平等で、ある意味不平等なものだ。誰でも病にはなりうるし、誰でも障害者になりうる。明日急に病になるかもしれないし、今日の帰り道に事故に遭い、社会に適合できない体になってしまうかもしれない。そんな事態に陥った時のために、社会全体でセーフティネットを整えておく必要があるのだ。



 最後に、この適合者症の最も恐ろしい症状を紹介しておこう。それは、適合者症患者のほとんどが、自分には関係ない事だと考えるところ。そして、患者にその自覚症状が無いという点である。さて、あなたはどうだろうか?

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社会適合者という病 結城彼方 @yukikanata001

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