何時間ものあいだ、ギターを弾きながら歌い続ける彼女と、ベンチに座って耳を傾ける僕。ふたりだけの美しい世界が綴られています。幸せなメロディーが崩壊していく描写には苦しくなりました。目には見えない音楽の話であるのにも関わらず、マフラーや水筒など小物をうまく登場させ、映像が目に浮かぶような作品でした。
美しい描写で、繊細な気持ちを描いたストーリー。主人公くんの感情が、心に直接訴えてくるように感じました。
音楽を最大のアイデンティティとする、あるいは、そうせざるを得ないヒロイン。「芸は身を助く」といったように、一般的には一芸に秀でるのは良いことだが、必ずしもそうとは言えない点に、人間心理の奥深さがあるように感じました。個人的には、考察も楽しむことができ、非常に気に入りました!※ネタバレになりかねないので、ここでは省略させていただきます(笑)いかに優れた楽器であろうとも、演奏者がいなければ音はならないという、根本的でありつつも、あまり目を向けてこなかった事実に改めて気付かされました。