第10話 改札口

月曜日の朝、美咲さんと駅の改札口で別れた。

僕の周りを現実社会が流れていく。

スーツ姿のサラリーマンや学生が、大きな口を開けた魔物という社会に呑まれは消えていく。

僕だってその中のひとつだ。


美咲さんの背中を見ながら、僕は叫んでしまった。

彼女の真っ直ぐな瞳が心に突き刺さる。

僕は。


「ううん。なんでもない」


って笑ったけど内心は違っていた。


『またね』


と言って欲しかった。

美咲さんは微笑みながら。


「ばいばい」


と言ってくれた。

それで良かったんだと思う。

これ以上、卑怯者にはなりたくはなかったから。

僕はスーツの襟を正して深呼吸をした。

そして、いつもと同じ様に人混みに紛れては消えていった。

一欠片の想いをしまい込んで。



おしまい。

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セックスレス・僕とミサキの7日間 みつお真 @ikuraikura

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