第3話 Smoke On The Water

(F・I)

宇宙空間

地球から伸びる、行先不明の宇宙エレベーターの柱、延々と光を放ち続ける。

聞こえ始めるコスミックノイズ。

Smoke On The Water。


地球

アジア大陸から日本列島、そして関東平野。


落下する無数のハート型ミサイル。

それと共に共鳴する葉牡丹ちゃんの笑い声。


暗転。


舞台に立ち込めるスモーク。

Smoke On The Water のintroduction。

最高潮に高鳴る。


静寂。


邪楽利邪楽利と音を鳴らしながら、センターポールに歩み寄る赤鬼甲冑。

仁王立ちのまま声高らかに笑う。

稲妻と雷鳴轟く。


音楽。


We all came out

to Montreux

On the Lake Geneva shoreline




空が白み始める少し前。

青山墓地に忍び込んだ喜助の手には、ドンキで購入した大量のお線香。

その後ろを着いて歩く杢兵衛は、一輪の薔薇を胸に意気消沈で御座います。


「えっと確かこの辺りで、あった!杢兵衛さん、ちょっと待ってて下さい」


喜助は適当な墓を見つけて、束になったお線香に火を点けました。

もうもうと立ち昇る煙と朝靄は、葉牡丹ちゃんとは縁もゆかりもない墓を見事に隠していきました。

喜助は咳込みながら杢兵衛に言いました。


「さ、チャチャッとやっちゃって下さい」


「ハニーに触れたいよゲボッ、ah〜ハニー、愛しのゲボゲボッ!」」


「触れちゃダメ」


「aha〜テイクオンミーマイハニー!」


「近寄らないで!」


「ん?田中権左衛門ゲボッ・・・?」


杢兵衛は墓の裏手へ回って、そこに眠る全員の享年を確認して叫びました。


「みんな大往生だから!」


「あ、こっちでしたこっち!」


小雨降り出す青山墓地に、喜助の声が響きます。


「ああっ、葉牡丹ちゃんの涙ですよ! ほら凄い、愛されていたんですよ!」


脳裏に浮かぶあの旋律。

あがらちょびさだ。


Smoke on the water A fire in the sky。




葉牡丹ちゃんの長い脚が、垂直のポールの上で華開く。

口に咥えた桜色のシルクの湯文字が、葉牡丹ちゃんの唇から垂れ堕ちて果てる。

反り返るその肢体。

浮き出る肋骨と小ぶりな胸、何かを求めて彷徨うミルク色した長い腕。


Smoke on the water。

Smoke on the water。


スターゲイザーロマネスク。


アップストロークのリフはドラック。

トランスする。

何者でもなくなる。

サイドスポットの愛撫。

フットライトのマゼンダ。

PINで焦らして。

もっと照らして。

もっと触って。

世界が変わるわ。

所有権を放棄された私の肉体。


スーパーマンにだってなれるわ。


A fire in the sky。




「あ、これだこれだ間違いない。ちょっと待って下さい。今から黙々と、いや、粛々とね」


喜助は愛想笑いをしながら、お線香がぎゅうぎゅうに詰まった箱に火を点けて、隣の墓にひょいと放り投げてしまいました。


「オーマイガッ。ゲボゲボ」


足元の水溜まり。

立ち昇る煙。

目の前の墓を目指す杢兵衛。

Smoke on the waterで御座います。

その光景を眺めながら、喜助はぼんやりと考えておりました。


「早く終わんないかなあ、まだかなあ。いっそ、これが終わったら故郷に帰ろかなあ。第2の人生スタートだ。葉牡丹ちゃん・・・来るわけねえか・・・」


すると、白み始めた青山墓地に、遠くからわんわん近づく消防車のサイレン音が聞こえて、これはマズいと思った喜助は杢兵衛を立ち上がらせて言いました。


「さ、逃げましょう」


「Why?gebogebo」


「いいから立って!ゲボッゲボッ」


たっぷり煙を吸い込んだふたりはむせ返って、その場にへたり込みました。

その拍子に見えた景色は、建立前の更地の墓場で御座います。

怒りに震えた杢兵衛は、顔を真っ赤にして怒鳴りました。


「hey!怒りのインバウンドcrazy!」


そんな杢兵衛に喜助がポツリ。


「もうどれでも選び放題ですから、お見立て下さいよ」



おあとがよろしいでしょう?

お時間になっちゃった。


あがらちょびさだ。

ありがと♪ ちゅっ

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Smoke on the Water with お見立て+Stripper みつお真 @ikuraikura

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