確実な描写力によって貫かれた文体が心地よく、読み進めると自然に風景が浮かんできます。人生の悲しみや苦悩を背負いながら歩む人物像、人間模様が見事に描かれた秀作です。
まず、丁寧な情景描写で、寒さの厳しい、けれど美しい雪景色の風景の中に連れていかれる落ち着いた文章が印象的です。冒頭部から鮮やかに、主人公の観ている光景が立ち上がります。自然の美しさと凄惨さを両…続きを読む
極寒の地で心中をしたけれど、生き残ってしまった青年。東京に住まいながらも正月はその地へ戻って犬橇を走らせる。同じ苦しみを抱く少女に出会い、そのとき彼は確かに昔の自分を見る。同情ではなく、大き…続きを読む
北国の氷に閉ざされた河の道。そこで心中を選んだ若者がいた。生き残ってしまった彼は、苦悩しながらも一年ごとにその地を訪れ彼女の冥福を祈る。そこで出会った少女も、彼と同じ苦しみをいだき、生きること…続きを読む
美しい冬の情景が広がる北国。想いを寄せた人をその地に失った、少年と少女。犬橇が駆ける。二人の心が近づく。水仙の花とともに。大自然の描写と素朴な人々の心情を、じっくりと味わってみたくなる短編です。
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