最先端の雑貨屋

鹽夜亮

第1話 最先端の雑貨屋

「いらっしゃいませ。どうぞこちらへ…混み合っていて申し訳ございません。ただ今タイムセール中でございまして…。商品説明でございますか?ええ、よろこんで引き受けさせていただきます」


「こちらが'xomusns'でございます。一言尋ねれば、あらゆる未知を解決してくれる優れもの。今や一家に一つは当たり前でございますから、お客様のお宅にも既に同じ機能を持つものがあることでございましょう。もしお待ちの物に不調を感じましたら、早めのお買換えをお勧め致します」

「次に、こちらが'obpydbsngd'でございます。先ほどと同じく、必需品でございますね。今や全世界、全国家、全文明に属する人類が同じものを携帯しております。…ええ、左様でございます。しかしこちらは実物として形がございますし、何より世界に一種類しかございませぬ故、大昔の品とは大きく異なる代物でございますよ」

「こちらは'jGbsmdtpg'と言う名の商品でございます。あらゆる作業を最も合理的、効率的な自動計算の上にこなしてくれます。毎日のお食事、お掃除その他諸々…全て我々人類の英知を超える能率で勝手に済ませてくれます。これさえあれば、お客様の人生に何一つ無駄なことなど起こり得ません」

「ああ、そちらの極小さな機械は'ajpmdwg'と申します。最新のものでして、お客様ご自身の頭皮にご装着いただければ、世界中の人類の脳波と自動リンク、アップデートをリアルタイムで繰り返しますので、どのような情報、ニュースから天気予報、最寄駅への最短ルート…などなどどれほど小さなものたりとも見逃すことはございません。もちろん、不要な情報などはお好みでフィルタリングする機能もございますので、ご安心ください。最新機種では、それも必要のないことになりつつありますが、まだ不安だと仰るお客様もいらっしゃいますので…」


「そちらは本日の目玉商品でございます。'A'という商品名でございまして…。こちらはその時に応じた所持者の行うべき行動を、自動計算、その結果を予測し、最善な結果をもたらすよう文章化して示してくれます。ついに人類は迷うことをやめる時代が来た、というわけでございますね。当商品の通り行動すれば、お客様は何不自由なく最善の人生を歩むことができましょう…。ああ、なるほど。その通り行動できるか不安、と仰いますか。もちろん、その不安に対するフォローも万全でございます。オプションとはなりますが、文章化した行動を所持者の脳波にリンクさせ、不快なくその通りに行動することができるようにする装置がございます」


「いかがでございましょう?…先ほど寄った店舗と一緒、でございますか。ふふ、左様でございましょう。どのお店を回っていただいても、無論同じ価格同じ品質でございます故。どちらで、何をご購入いただいても、不平等は一つもございません。無論、タイムセールも全世界で一秒と差異もなく行われております…ええ、左様です。私はもちろん、全て所持しております。故に、こうしてお客様と巡り合えたのでございましょう」

………………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最先端の雑貨屋 鹽夜亮 @yuu1201

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ