第7話
あれから一か月。何の変哲もなく過ぎゆく平和な日々。
上野はロリエルを見た事さえ覚えておらず、俺だけは決して忘れまいと心に誓ったがどんな媒体に
家に帰ると衝動買いした理由を思い出せないゲームソフトの山。
何故か二人分買ってしまうスーパーの牛丼。
記憶の中にいるはずのない誰かの輪郭だけがぼんやりと残っていた。
そしてさらに一か月が過ぎたある日。
いつも通りスーパーで一人分の牛丼を買ってアパートのドアを開いた。
俺は一人暮らし。
当然帰りを待ってくれてるやつなど誰もいない。
居間に背を向けてドアの内カギに手をかける。
言いようのない寂しさに俺はこうつぶやいた。
「……彼女がほしい」
「君の願い聞き届けたよ」
驚きよりも懐かしさが込み上げ、俺は振り向いた。
「僕が君の彼女になってあげるよ」
少女を認識したとたん、忘れていたはずの記憶が次々に蘇って来た。
「お前は……ロリエル⁉」
再開の挨拶も無しに俺は彼女に抱き着いた。
「おやおやおや。ロリにはまるで興味ないと思っていたのに、僕が目覚めさせてしまったかい?」
「ばかやろう……。もうお前に会えないと思って俺は……」
「ははは。ごめんごめん」
「でもお前は消されたはずなんじゃ……」
「そうだねぇ、例えるなら天才ハッカーがシステムに無断で侵入して、不具合を直したらデバッカーとして正規採用されちゃったっていう話なんだけど……わかる?」
「良くわからんが、お前が無事ならそれでいい!」
俺はもう一度愛くるしい少女を抱きしめた。
「ははは。参ったねこりゃ。でも、僕は君の彼女だから好きなだけ甘えるといいさ」
「別に甘えてるわけじゃねえ! てか、お前正式採用されたってことは本物の神様になったのか?」
「まあね。でも例えるならアルバイト以上万年平社員以下だから権限は少ないし、この部屋から出られないのは変わらないんだけどね」
「そうか……じゃあ、また引きこもりだな」
「失敬な! 僕は――」
この次にやつが何て言うのか俺には想像がついた。そう、彼女は――
「引きこもりだけど引きこもりじゃない」
彼女は引きこもりだけど引きこもりじゃない 和五夢 @wagomu
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