長い片思い
さいとう みさき
長い片思い、でも奇跡はやって来る私は恋する乙女なの!
私は恋をしてしまった。
それはもう一年も前になる。
いつもの様に学校へ登校する慌ただしい朝。
前髪が上手く決まらなくてお約束の食パンを
これで曲がり角で運命の出会いでも出来れば
この
でも世の中そんなにうまくは行かない。
ましてやこんな田舎の地方都市。
だからそんな乙女ゲームの様な
「はぁ、彼氏欲しいなぁ」
そんな事をぼやきながら
するとあろう事か散歩中の人とぶつかってしまった!!
ドンっ!
お約束通り私はしりもちをついてしまって短いスカートの中をさらけ出す。
ここまでは
そして
わんわん!
パタパタ!
ぱくっ!
「ごめんごめん、君、大丈夫?」
「いったぁ~。 ‥‥‥へっ?」
差し出された白っぽい手のひらを見て私は
見上げれば背の高い線の細い髪の毛が長い女性‥‥‥ いや、男性だった。
私は
まあ見られても中にはスパッツ
でもやっぱり年頃の女の子。
男性の前で何時までもスカートの中をさらけ出すなんて
「
その声にもう一度その男性を見る。
差し出された手と同じ白っぽい肌色の男性。
しかしその顔は
「あ、ごめんなさい。急いでたもので」
「いやいや、こちらこそごめん。
そう言って私はその男性の手を取り立ち上がらせてもらう。
そして
ひょいっと引っ張られたその力は思っていた以上に強く
「あ、ごめんね。うちの犬が君のパン食べちゃった」
「あ、い、いえ、いいんです。私学校あるからこれで!」
その男性は犬の散歩中だったようだ。
私は
それが私たちの
それから
最初は
彼の名は
現在大学生で実家の犬の散歩が彼の
神谷さんは話すと気さくな人で私との
そんなこんなで私たちはもう一年近くこんな関係を過ごしてきた。
ところが‥‥‥
「あれ? 神谷さんだ、どうしたんだろう?」
帰宅中の私は犬の散歩をしている神谷さんの姿を見つける。
声をかけようとしてなんかいつもと
短い
それはまるで主人である神谷さんを
「神谷さん! どうしたんですか?」
私は声をかける。
「ああ、君か‥‥‥ うん、なんでも‥‥‥ないんだけどね‥‥‥」
神谷さんの
もう、
もう一年近く顔を合わせているのにこの子は
少し
しかし今は神谷さんの様子が気になる。
いつもならなんとなく
私たちは公園に着く。
「ん~、神谷さん今日は一体どうしたんですか?」
「ん? あ、ああ、ごめんね。実は彼女に
「えっ!? 神谷さん彼女いたんですか!?」
思わず本音が出てしまった私。
でもそれもそうかぁ、こんな
ちょっと
私は
こんな
そう思うと
今までそんな事を気にした事は無かったのに。
「
神谷さんはそう言って深いため息をついた。
こんな
「まあ、僕が悪いんだけどね‥‥‥」
神谷さんはペギーの頭をなでながらそうつぶやく。
ペギーも神谷さんをいたわるようにその手を
「か、神谷さんみたいなステキな人を
私が思わずそう言ってしまうのを神谷さんは少し
つられてペギーもこちらを見る。
いきなり四つの
そしてなぜか顔が熱くなってきた。
「あ、その、ごめんなさい」
わんっ!
ペギーが
ううぅ、いきなり
しかしそんな私に神谷さんは優しく
「ありがとう、君は優しいんだね」
わんわんっ!
どきっ!
なんだろうこの気持ち‥‥‥
私は今まで感じた事のない胸をしめつけられるようなそして
「あ、あの、急用を思い出したので失礼します!」
私は思わずそう言ってしまってドキドキし始めている胸を押さえその場を走り去ってしまった。
それからだ。
神谷さんが散歩している姿を見てもどうしても声をかけるのがはばかられる。
ペギーは今日も
だからもう神谷さんも立ち直ったのだろう。
でも今度は私がダメだ。
これはきっと恋‥‥‥
十七年間そんな感情を持った事の無い私が初めて味わう甘くそして切ない気持ち。
そしてそんな自分に気付くとますます神谷さんたちの前に行くのが怖くなる。
私はそれでも神谷さんたちの姿を見ると目が離せなくなっている。
どうしたら良いの!?
いっそこの気持ちを打ちあけたらいいの!?
でも、私みたいなのの気持ちが伝わるのだろうか?
そんな
そんなある日、下校中の私の後ろから声がかけられる。
「やぁ、こんにちわ!」
わんわんっ!
私は思わず赤くなる。
こんな
「最近見かけても声かけられないから
わんわんっ!
そう言いたくても私はその
「あ、あの、そうじゃ無くてその、ちょと‥‥‥」
「うん?」
「と、取りあえずこんな所では何ですから公園行きませんか?」
私はドキドキする胸を押さえて神谷さんにそう言う。
神谷さんはにっこりと笑って「いいよ」とだけ言って歩き出す。
久しぶりに正面からちゃんと目が合った。
私はそれだけで気持ちが
そして胸のドキドキが
だめなんだ、やっぱり好きなんだ!
神谷さんは歩きながら
ただこうして
そう感じているといつもの公園に着く。
神谷さんは近くの自販機で飲み物を買ってきて私にも渡してくれる。
お礼を言い、公園のベンチに座る。
なんとなく公園の時計を見ると四時五十四分。
「君と話をするなんて久しぶりだよね?」
「え、ええと、ごめんなさい」
私はペギーを見る。
つぶらな
私は何となく手を出してみる。
するとペギーは私を見て
「ははっペギーは何時まで経っても君になつかないなぁ。ペギーダメだよその子を
「え?」
神谷さんから意外な言葉が発せられる。
私は神谷さんを見てからペギーを見る。
ペギーは
私は何となくもう一度ペギーに手を
「ペギーも最近は君の事
神谷さんにそう言われドキッとしながら私はペギーの頭に手を置いた。
するとペギーは
たーんたんたぁたぁー♪
公園に子供たちに五時の知らせをする音楽が
私はもう、うれしくてうれしくてペギーを
するとペギーも今度は
ペギー!
もう大好きっ!!
「やっと、やっと私の思いが通じた! ペギー、
「だよね、この短い
そう、私はペギーに恋している。
もう、他のダックスフンドじゃ満足できない!
ずっとツンデレだったペギーが私にやっとなついてくれた!!
ああ、
私たちはペギーの
ダックスフンドさいっこーっぅ!!
長い片思い さいとう みさき @saitoumisaki
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