風が吹いたら桶屋が儲かり、中国が民主主義国家になったら足立区が滅亡する

@HasumiChouji

風が吹いたら桶屋が儲かり、中国が民主主義国家になったら足立区が滅亡する

 ちゅど〜ん。

 ヤツを尾行していた俺の部下達のカメラが捉えた映像の中で、妙に脳天気な爆発音と共に、お洒落系の喫茶店は粉々になった。

 かなりの確率で、ヤツ……わざと泳がせていた反政府活動家も死体と化しただろう。

 俺が、まず、思ったのは、俺達がヤツを泳がせている事を知らない別の部署の仕業では無いか、と云う事だった。

 そして、次に心配になったのは、もし、ヤツが、ここで会う予定だった日本の政治家の秘書とやらも、この「テロ」に巻き込まれて死んだのなら……国際問題になりかねない、と云う事だった。

「おい、例の日本の地方政治家の秘書だが……」

『変です。既に、空港に居ます。日本行きの便への搭乗手続を終えて……』

「すぐに手を回して『確保』しろ‼」

 おかしい。

 そいつの行動は、そいつが犯人ホシである事を示唆している。

 だが、ウチの国の反政府活動家が死んで、日本に何の得が有るんだ?


「ですから……言った通りです……。足立区の滅亡を阻止する為には、中国の民主化を阻止する必要が有ったんです」

 確保した「容疑者」は、あっさりと落ちた。

 明らかに諜報機関やテロ組織のメンバーでは無い。

 そうであれば、口を割るまでに、もっと手間がかかる筈だ。どう見ても、対尋問訓練を受けた事が有るようには思えなかった。

 爆薬その他は……どうやら、日本のヤクザの仲介で、こちらの黒社会の連中から入手したらしい。

「一体、何を言ってるんだ?」

「いや、ですから、中国が民主化すれば、中国での映画の検閲が緩くなる。そうすれば、中国を市場にしているハリウッド映画でLGBTと云う設定の登場人物が増える。ハリウッド映画は日本でも公開されているので、日本の青少年にも悪影響を及ぼす。そして、LGBTが増えれば、我が足立区が滅びてしまう」

 その時、尋問用の部屋に部下が入って来た。

「尿検査と血液検査の結果が出ました……。少なくとも、そいつは、既知の違法薬物はやっていません」


 自分のオフイスに戻って「外国の政治家の関係者だが、どう考えても頭がおかしいヤツ」と云う困った容疑者をどう扱うべきか頭を悩ましていると、部下の1人がTVを点けた。

「どうした?」

「とんでもない臨時ニュースが……」

『例の伝染病の終息後、初めて開催されたアメリカのコミコン会場で自爆テロ未遂が起きました。容疑者の不審な行動を怪しんだ警備員によってテロは未然に防がれましたが、コミコンそのものは中止になりました。なお、容疑者は日本の東京都足立区の地方議員の関係者を自称しており、犯行の動機は、人気アメコミ映画シリーズの女性キャラクターが両性愛者である事を匂わせる設定となった事に反感を持った為と見られております。容疑者は「人気映画の登場人物にLGBTが増えれば足立区が滅亡する」と云う意味不明な供述をしており……』

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