異世界ファンタジー名探偵マック2

渋谷かな

第1話 犯人は吸血鬼!?

「ワッハッハー!」

 マックは異世界ファンタジー新聞の朝刊を読んで馬鹿笑いしている。

「父さん、母さん、ミスド、俺が一面を飾っているぜ!」

 自分の写真がデカデカと載っている新聞を見せつけて大喜びしている。

「はいはい。良かったね。」

「マック、食事中は静かにしなさい。」

 マックの父親と母親は息子の探偵ごっこに興味はなかった。

「お兄ちゃん、また事件よ。さっさと出かけたら?」

「なに!? 事件!?」

 マックの妹のミスド。当然のように妹も兄の探偵ごっこに興味はなかった。

「今朝、フード駅の近くで変死体が見つかりました。」

 異世界ファンタジーニュースが事件を放送している。

「事件だ! 事件が俺を呼んでいる! ワクワクするぞ!」

 マックは事件を知ると興奮する性格だった。

「行ってきます!」

 マックは朝食も半分で靴を履いて出かけていった。

「まったく騒がしい奴だ。ゆっくりゆで卵も食えん。」

「探偵ごっこをする情熱と同じくらい勉強をしてくれると嬉しいんだけど。」

「あ~、恥ずかしい。あんなお兄ちゃんを持って妹の私は恥ずかしい。」

 家族は身内に探偵ごっこをしている人間がいることを迷惑がっていた。


「おはようございます。カーネル警部。」

「おお、マックくん。来てくれたか。助かった。」

「警部、また事件を迷宮入りにしようとしましたね?」

「アハッ!」

 殺人事件の現場にマックは到着した。異世界ファンタジー警察の面々が捜査をしていた。

「警部、状況はどうですか?」

「恐らく犯人はコウモリか何かで首に牙で噛みついた跡がある。」

「そうですね。でもコウモリにしては牙で突き刺した跡が大きいような。」

 何かにマックは気がついた。

「う~ん。」

 そして周囲を見回すマック。

「カーネル警部。犯人が分かりましたよ。」

「なんだって!? もうわかったというのかね!? マックくん!?」

「はい。楽勝です。なぜなら犯人は事件現場に戻って来るという習性があるからです。」

「なに!? ということはこの野次馬の中に犯人がいるというのかね!?」

 事件現場は野次馬でいっぱいだった。

「犯人はおまえだ!」

 マックが多くの野次馬の人々の前で犯人を指名する。

「ええー!? どうして私が犯人なのよ!? 証拠はあるの!? 証拠は!?」

 犯人と指名された女は慌てて騒ぎ立てる。

「ありますよ。」

「ええー!? あるの!?」

「あなたのシャツについた血! それがあなたが犯人だという証拠だ!」

 犯人のシャツに血がたくさん飛び散っていた。

「しまった!?」

「観念するんだな。殺人犯!」

 マックは犯人を追い詰める。

「こうなったら仕方がない! おまえの血も吸ってやる! うおおおおおー!」

「姿が変わっていく!?」

 殺人犯の人型から異世界ファンタジーらしく歯が牙に変化していく。

「おまえの血を吸いつくしてやる!」

 現れたのは殺人犯の吸血鬼ドラキュラ子。

「やれるもんならやってみろ。」

 しかしマックは微動だにしない。それどころか楽しそうに笑っている。

「なに!?」

「普通の探偵は事件の謎を解いて警察に任せて終わりだが、俺は違う。俺はモンスター退治までやるプロの名探偵だ。」

 マックは犯人であるモンスター退治までする探偵だった。

「まさか!? おまえが有名な!? あの異世界ファンタジー探偵か!?」 

 モンスターの間でもマックの探偵の名声は聞こえていた。

「その通り。俺の名前はマック。異世界ファンタジー名探偵さ。」

 少年の名前はマック。名の知れた名探偵だ。

「それがどうしたのよ!? たかが探偵如きがモンスターである私に勝てると思わないでよ!」

 吸血鬼ドラキュラ子がマックに襲い掛かる。

「おまえ、さっきから探偵、探偵、うるさいんだよ! 俺は名探偵だって言っているだろうが!」

 かなりプライドの高いマックは名探偵の名が抜けて探偵と呼ばれると自尊心が傷つくのであった。

「知るか! 血を吸わせろ! こっちは喉が渇いているんだ!」

 吸血鬼ドラキュラ子は突進をやめない。

「いいだろう。この俺を名探偵と知っても挑んでくるなら、倒させてもらう!」

 マックは戦闘態勢に入る。

「いでよ! 名探偵の剣!」

 マックは手品みたいに何もない所から剣を出現させる。

「ゲゲゲッ!? それは聖剣エクスカリバー!? どこでそんな物騒なモノを手に入れたんだ!?」

「え? 聖剣エクスカリバー? 知らなかった。魔王城の道端に落ちていたんだ。」

「おまえ、探偵じゃなくて泥棒だろ?」

「うんうん、名探偵。アハッ!」

 マックは拾った剣を交番に届けなかった疑惑が浮上。

 仕切り直す。

「名探偵の剣だと!?」

「その通り。名探偵の俺のためのディテクティブ・ソードだ!」

 名探偵は剣を構える。

「どんな難事件も快刀乱麻! くらえ! これが俺の名探偵斬りだ!」

「ギャアアアアー!? やられた!?」

 マックは必殺技で吸血鬼ドラキュラ子を斬り倒した。

「安心しろ。動けなくなる程度の峰打ちだ。」

 吸血鬼ドラキュラ子は死んではいなかった。

「どうして人間を殺したんだ?」

「私はお城で大人しく暮らしていました。それなのに人間がお城から出ていけと地上げ屋をよこし私はお城から力づくで追い出されました。住むところもなくなり、お腹も空いたので、仕方がなく人間を見つけて生き血を飲んでしまいました。ごめんなさい。」

 吸血鬼ドラキュラ子にも罪を犯す理由があった。

「そうだったのか。すまない。」

「え!?」

「悪いのはお金のために美しいお城を破壊した人間かもしれないな。でも人間を殺してしまったら、お城を殺している人間と変わらない。罪を償って、またお城を築けばいい。」

「ありがとうございます。」

 謝ってもらい、自己の境遇を聞いてもらい、自分を理解してもらい、再び生きるチャンスをもらった吸血鬼ドラキュラ子は涙を零すであった。

「あの! 刑務所で罪を償ったら、あなたの血を吸いに行ってもいいですか?」

「それは断る。」

「ケチ!」

 こうして吸血鬼ドラキュラ子はパトカーの乗せられて連行された。

「はい。一件落着。」

 事件を華麗に解決する異世界ファンタジー名探偵であった。

「いや~! さすがは名探偵だ!」

 そこにカーネル警部が一人現れた。

「これで事件も解決。手柄も警部である私のものだ。」

「警部は何もしていないですよね?」

「アハッ!」

 笑って誤魔化すカーネル警部。

「どんな難事件も解決してみせます。俺は名探偵ですから。」

 異世界ファンタジー名探偵マックの大活躍は始まる。

 つづく。

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