イッツ・ア・ボッチ・ジョーク

 小学生の頃の俺は、ひときわ影が薄かった。常にひとりだった。

 昼休み、クラス全員でレクリエーションをすることになった。

 種目はかくれんぼ。俺は隠れる側になった。隠れるのは昔から得意だ。それに、余計な体力を使うことが少ないので、インドア派の俺にとってはありがたい。


 恐らくここにいれば誰にも見つからないだろう、という場所に隠れた。


 長い時間が過ぎたが、誰も俺を見つけに来ない。

「やはり俺はかくれんぼの天才だ」

 誰も見ていないところで、ひとりで得意げになった。


 その後、更に時間が過ぎたが、誰も見つけに来ない。もしかしたら、俺が最後のひとりなのかもしれない。

 そう思い始めた頃、校庭の喧騒はひっそりとなり、まもなくして昼休み終了のチャイムが鳴った。

 俺は気づいた。

「そもそも俺の存在に誰も気づいていないのだ」

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短編置き場 こばなし @anima369

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