大脱走

阿佐ヶ谷ピエロ

      大脱走

ここは、地獄だ。俺は5年前にここに配属になったが、もう限界である。俺の就寝部屋は確保されているが、大所帯の生活で完全なる序列社会がここには存在している。私は下から三番目ではあるが、部下は素行が非常に悪くいつも部下同士で喧嘩が絶えない。私はいつもその仲裁である。私の上司の軍曹はそんなときでも中尉と談笑である。ただ、最も怖いのが序列二番目の中尉である。私の監視と嫌みがもはや趣味のようだ。

中尉は部下の喧嘩の時もお前のしつけが悪いと俺を罵る。

という訳で今夜こそこの部隊から脱走する。俺は、みんなが寝静まったのを確信して、廊下に出ようとした。と、その時、中尉が目を覚ましてしまった。中尉は私が廊下に立っているの見てこう言った。

「あら、ゆきひこさん。どうなさったのですか?まあ、丁度よかったわ。お水持って来てちようだい。喉が渇いたわ。」 

「はい。お母さん」 

                終わり

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大脱走 阿佐ヶ谷ピエロ @20060204

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