コミックウォーカーで漫画を数話読み、そこから漫画と小説を購入しました。
自分は恋愛モノ作品(映画ドラマ漫画など)にほんのりとした苦手意識を持っていました。
というのも恋愛モノには
・話を盛り上げるための超えるべき障害がテンプレになりがち
・キャラ同士のすれ違いや勘違いが増えると徐々にリアリティがなくなってくる(無理筋なすれ違いを見ると興ざめする)
・女性目線での抒情的で詩的な描写が理解しづらい(このキャラのどこに惚れるんだよとか思っちゃう)
などのイメージがありました。
本作はまずミステリーから始まります。
そしてミステリー要素を残しながら恋愛モノへ変化していきます。
恋愛の描写では男性目線で描かれる部分も多く、こりゃたしかに好きになっちゃうよね、とか、人を好きになると自分が自分じゃなくなる感じわかるな、とかちゃんと納得しながら読めるので物語に没入できました。
特に本作ですごい!と思ったのが、ループ要素を恋愛的なすれ違いにうまく活かした点です。
「このキャラは記憶を持ってるからこう思うけど、相手はそうじゃないからこういう勘違いするのは確かに仕方ない」という絶妙な説得力を持たせたすれ違いや勘違いが展開していき、しかも飽きさせることなく作品に落とし込んでいます。
他にも、キャラが生き生きしながらも陳腐にならないセリフ力も良いですし、物語を丁寧に組み立ててきたからこそグッと来るシーンで読者を涙させる構成と表現力も素晴らしいです。
読者に想像をさせながらも文章が冗長にならず、かといって説明が足りないとも思わせない、絶妙な文章表現でした。
作者さん、本作を生み出してくれてありがとうございます。
最後に、各キャラクターの群像劇や関係性など読んでて、彼氏彼女の事情を思い出し懐かしい気持ちにもなりました。
最初に連想したライト感が、いい意味で裏切られました。
むしろ、ミステリに近い印象で、エンドマーク直前まで、ハラハラが止まりません!
ループものといえば、リスタートした主人公が、知識チートでハッピーエンドが定石。
ところがこの作品、デッドエンドの原因が不明につき、正解がとんと分からない手探り状態。一巡目で愛しいひとを失った主人公は、トラウマを抱えつつ、不退転の覚悟で二巡目の学園生活へ挑むのです。
といっても、主人公とその友人たちは皆、個性豊か(強烈?)で、彼らと過ごす日常も、ふりかかるトラブルも、臨場感たっぷり。
青春かくあれかし、瑞々しくカラフルな描写に、ホッコリしたり笑ったり、切なく身悶えたり。
主人公視点でありながら、群像劇の一面も。とにかくエピソードが豊富で飽きることなく読みすすむ、読みすすむ!
核となる竜の試練の謎も相まって、夜更かし必須の作品です。
気付けば、仕上げに書籍もポチり。
この感動を、身内と分かち合います。
あなたも、どっぷりはまってみては?
大好きな恋人に訪れた突然の原因不明の死。そしてやはり理由も理屈もわからないまま時間を遡ったオリアナは、今度こそ死なせないために奔走する。
竜神と魔法使い、ファンタジーな世界で織りなされる青春と循環と深い愛の物語。記憶を持つが故に必死に足掻く者。何も知らないが故に翻弄される者。愛する人を失いたくない必死さと、自分ではない誰かを見られているようでまだ幼い心に振り回されるいじらしさ。逆行、前の人生の記憶といった謎を孕みながら、年相応に己の心と歩んでいく姿は可愛いと言うほかない。繰り返しの中で周りとの関係性も周りの物語も別の側面を映し、読み終える頃には誰もを好きになっている。
名作でした。