挫折をした主人公の耳に入ってきたのは冴えないクラスメイトの女子の歌う声。彼女は教室での彼女と違ってとても輝いていた。彼女に救われ、憧れるようになる主人公。それは憧れだけじゃなかった。彼女にラブソングの曲を作って欲しいと言われてしまう主人公。このラブソングは誰へのものなのか。ラストのセッション、心が重なり響き合う感じが伝わってくる。きっと二人の未来は明るい。
言葉でなくては、伝わらないものもある。でもきっと、言葉だけでは足りない想いがある。それは音楽であったり、絵であったり、行動であったり。私たちは評価されるために芸術を知るのではなく、想いを表現するために、芸術を知るのでしょう。歌とギターとピアノ。最後のシーンが、本当に音楽が聴こえてきそうです。
音楽から逃げていた少年と、シンガーソングライターを目指す少女との物語です。高校生が抱く将来への夢や不安、また淡い恋心が、誠実なタッチで美しく描かれています。二人を包みこむ空間はきらきらとまぶしく、優しくて、幸せな音楽が聞こえてくるかのようです。きっとこの先も二人で夢色の音楽を奏でていくのでしょうね。素敵な名短編でした。