10話 特殊スキル【プロテクト】
ダンジョン地下街を歩くトキジロウ……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
午前中は、五組のハンターパーティーがメイサのダンジョンを利用した。
受付の椅子に座り、チュウの仕事内容を横で見て覚える。
名簿にパーティーメンバーの名前を書かせる
↘
一人から入場料、銀貨五枚を受け取る(まとめ払いもあり)
↘
ヘルパー保険(銀貨五枚)の加入を聞く
↘
希望階層への精霊転送(ハーフト銅貨一枚)の利用を聞く
↘
入り口転送札(ハーフト銅貨一枚)の利用を聞く
この流れを覚えれば受付業務は完璧。
アタッチメントも飛ぶように売れていた。
メイサが言っていた通り、斧や剣を持つハンターは必ずといっていいほどアタッチメントを購入してダンジョンに潜った。
特定階層の固定狩りがメイサの管理するダンジョンのルール。
例えば、二十一階層で効率が出なかったりするとパーティーが階層を移動する場合がある。
その場合、精霊電話で移動先の階層を受け付けに知らせる。
他のパーティーと、かち合わないようにするためのもの。
ルールを守らなかったパーティーは出入り禁止となる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
昼飯を食ったトキジロウはダンジョン地下街に向った。
隣には、メイサが並んで歩く。
昨日の場所でオババが座っていた。
「オババ! 」
メイサが声をかける。
「来たね… トキジロウさん」
「おう どうした? 話があるって聞いたんだが」
「もう少しこっちに… 」
オババは、少し声音を小さくして言った。
「あたしの見立てだと【鑑定】を持つ者に対となるスキルが存在する」
「対になるスキル!? 」
「【鑑定】しても情報を読み取れない者がいるはずだよ そいつを早いところ探して【プロテクト】を習得しなさい でないと、【鑑定】持ちがトキジロウさんを鑑定すると情報が盗まれるよ」
取得スキルを隠すための特殊スキル【プロテクト】
オババもメイサも、聞いた事がないスキルを持つトキジロウに必要だ。
話を聞いていたメイサも隣で頷いている。
悪いやつは何処にでもいる。
利用しても利用されるのは我慢できないトキジロウ。
自分の情報を守るため【鑑定】を使い捲くって【プロテクト】持ちを探す事にした。
「【プロテクト】を使った者に合えばスキル干渉が成立する 後は、自分に【プロテクト】をかけて情報を守りなさい トキジロウさん」
希少な情報だった。素直に礼を言うトキジロウ。
「ばーさん、ありがとうな その内、何か礼はする 【プロテクト】持ちの心当たりは無いか? 」
「すまないね 若い時、いたずら半分でスキルを使っていた時、偶然見つけたもんだから… 」
「わかった 自分で探してみるよ」
トキジロウは、その場から立ち去った。
「どうする気? 」
メイサが聞いてきた。
「そうだな… 人に聞くのも怪しまれるだろうし、片っ端から見ていくしかないだろ」
「そうよね… 【プロテクト】持ってますか? って聞き回るのはねえ」
「店番は引退だ これから町に行って【鑑定】してくるぜ」
「わかった ダンジョンあるから待ってるわ」
トキジロウは、ダンジョン地下街を抜けてメイサと別れた。
町の中心に向って歩き出すトキジロウ。
トキジロウは考える。
(歩いているやつを鑑定しても、一瞬で見逃してしまう可能性があるな… なら、どうする? 立ち止まっているやつを鑑定するのが無難か)
トキジロウは、人が立ち止まりそうな場所を探す。
中々、見つからない。
すると、本屋だろうか… 雑誌が置いてある。
(ここだ! 立ち読みしているやつの背後に回り鑑定し捲くってやる!! と、その前に… )
トキジロウは、上着の内ポケットからサングラスを取り出した。
黒いサングラスをかけるトキジロウ。
(これで俺の視線は解らないだろう… )
本屋に乗り込んだ。
案の定、何名かが雑誌を開いて立ち読みをしていた。
トキジロウは、着かず離れず一定の距離を保ち目の前の本を手に取った。
一歩下がり、ページを捲ると斜め前にいる男(人間)の鑑定をはじめた。
【鑑定】
(職業:テイマー アライ チュウと同じか… 特殊スキルは……なしか)
はずれだった。
トキジロウは、本を棚に返し裏に移動した。
裏で女が立ち読みしている。
トキジロウはテイマーの男と同じく一定の距離を保って本を読む振りをする。
【鑑定】
(職業:ビショップ!? これは… 是非、習得したい魔法とスキルだ! 回復、防御、聖属性魔法… 特殊スキルは… なしか)
トキジロウは、次々と移動して鑑定していく。
七名ほど鑑定すると店員が移動を繰り返すトキジロウを見張る様になる。
怪しさ満載のトキジロウ。
(そろそろ潮時か 場所を変えるか)
トキジロウは、今持っている本をカウンターに持って購入する。
「銅貨五枚になります」
トキジロウは、金を払うと店を出た。
購入した本のタイトルは
『サルでも解る 簡単!! 魔法とスキル上達レッスン【初級編】』だった。
(サルでも解る!? 馬鹿にしやがって…… )
一瞬、切れそうになったトキジロウ。
捨てようとした手を止め歩き出した。
(買ったんだし読んでみるか… 初心ってのは間違ってないしな)
少し歩くと、小さな公園を発見した。
ベンチを見つけ、腰掛けると本を開き読み出した。
すべての魔法とスキルが使える、チートなダンジョンヘルパー ~さらわれて埋められそうになったから異世界に逃げ込んだが、魔素を浄化しないと帰れない物語~ 安積kensui @asaka_kensui
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。すべての魔法とスキルが使える、チートなダンジョンヘルパー ~さらわれて埋められそうになったから異世界に逃げ込んだが、魔素を浄化しないと帰れない物語~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます