プロローグ(真)
プロローグ(真)
天界から地上へ堕ちたのは偶然だった…
庭で遊び、池に落ち…気づいたら地上へいたのだ。
まだ13歳と幼かった私は途方に暮れた…どうやって天界へ戻ればいいのかわからず…玉のように育てられた私に生きていく術はなかった。
人攫いに捕まり売り飛ばされそうになった時、私は偶然その地域一帯を治めている長だという彼に救われた。
私は助けられた恩を返すため神力を使って彼の仕事を助力した。
彼は私を天女と呼んだ…天界から来た力を持つ女性の事をそう呼ぶのだという…
彼は私を丁重に扱い、行く当てがないと知ると自らの屋敷に住まわせた。
天涯孤独となった私は彼にすがるより他なかった…
けれども彼と共に暮らすうちに、私は彼に恋をした…10歳以上も年上の彼が立派な大人に見えたのかもしれない。
皆に好かれ、信頼され、頼られる彼の側にいる事が誇らしかった。
幼い私の力を利用する彼を批難する者達もいたが、私は彼が喜び褒めてくれればそれでよかった
歳月が過ぎ、私は18歳になり誰もが認める大人の女性へと成長した。
皆が私を美しいと褒め讃えてくれたが、彼だけは私を褒めようとはしなかった
成人の祝いの席で彼は私に言った「私の妻となってこれからも側にいて支えてほしい」と…
私は心から喜んで受け入れた…私は彼を尊敬し、愛していたからだ
…けれども彼はこうも言った。
「私の事は愛さなくていい」
彼は…ただ天女である私とその力が欲しかっただけなのだ。
私の心は酷く傷付いたがそれでも彼の側から離れる事だけは考えられなかった。
だから私は彼の望む私であろうと考えた…私が天女である限り、私に力がある限り決して彼は私を手放しはしないのだと。
私は彼に利用されていただけなのかもしれない…それでもかまわない…彼に愛されなくていい、ただ私の側にいて、私とずっと一緒にいて、私を裏切らない彼であればよいと…
それでも希望は抱いてしまう…彼が私と同じように私を愛してくれているのではないかと…
「私がいなくなったら寂しいですか?」
「どうした?天界には帰れないのだろう?ずっとここにいればいい、皆もそう思っている」
彼はそう言って優しく私に笑いかけ、私も彼と共に優しく笑う…
違う、そうじゃない…
彼にとって他の誰でもない「私」がいなくなったら寂しいと言って欲しかっただけなのに…
そして私は彼に力を与えた…私だけを想い、愛し、決して裏切る事のない…私の恨みと想いを込めて…
太陽と月の王 時を越えた彼女の願い @miru_chan
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