冒険者辞めて開業したモフモフカフェだけど変な客が良く来ます

スライム道

第1話

私はほんの少し前まで冒険者ギルドでテイマーをやっていた者だ。今は流れ人から伝わったモフモフカフェをやっている。


冒険者だった頃に比べると非常に楽だ。


冒険者時代は如何に強いモンスターをテイムし戦闘に役立てるかが重要しされていたため過酷な場所に行く必要があった。

だがモフモフカフェは弱いがモフモフなモンスターをテイムするだけで後は適当な料理を出せば儲かるのだ。


そもそもテイマーが希少な存在のため競争相手もいないのも嬉しいところ。開業したての頃も知り合いの女性冒険者達に来てもらい宣伝してもらったため今では町の女性達憩いの場となっている。


そんなモフモフカフェにある客が訪れた。


「……」


「いらっしゃい。お一人ですか?」


厳ついおっさんだった。モフモフカフェに似つかわしく無い筋肉ムキムキのおっさんがいた。


冒険者だろうか?


「ここは餌の持ち込みは大丈夫か?」


「はい。ただしあげる餌の確認とお店の餌とは別料金でお金をいただきますが。」


うちはモンスターにあげる餌の持ち込みを許可している。市場価格の餌と別料金を足せばお店の餌と価格は変わらないのだが偶に農家の方もくる為ある程度需要があるからだ


「これだ」


「これはリンゴ?」


彼が差し出したのはリンゴであったがリンゴにしては余りに大きな魔力を感じる。


「魔境のリンゴだ。」


「魔境産のリンゴ!?なんてもの食べさせようとしてるんですか!市場に出したら金貨がいくらあっても足りませんよ!」


魔境

人間が到底辿り着けない場所と呼ばれる場所の総称だ。稀にそこから出てくる素材が出回るがそのどれもが一級品で先ずモンスターの餌にすることは考えられないだろう。


「うーむ、わかった。では魔力を抜けばいいんだな」


スッと魔力の感覚が消える


「ええええ!!!物体から魔力を吸うなんて一流の魔術師でもできませんよ」


「まあいいだろ。できるんだし。」


「はあ、わかりました。こちらがメニューになります。」


こんな店に一流冒険者が来ようとは思いもしなかった。


カランコロン


また客がきたようだ。だが私は客の容姿に対し口をあんぐり開ける他無かった。


「ワンワン!ワンワン!」


犬系モンスター【フレアドック】が一心不乱に客に飛びかかった。


「おお!可愛いワンちゃんだ。」


フレアドックは客の骨をペロペロと舐めている。そう彼はアンデットだ。フレアドックを一通り撫で回すとこちらを向いた。


「店主。フリータイムで持ち込みの餌は私自身だ!」


「あ、ハイ」


もはやツッコんだら負けだと思い仕事に遵守する。


「ラビットちゃんモフモフですね。いい毛並みですね。御林檎食べますか?」


あのイカツイおっさんがあのおっさんが猫撫で声でウサギ系モンスター【モフリン】をあやしている。しかもモフリンが嫌がっていないだと。モフリンは警戒心の強いモンスターで強者を見ると近づかない。つまりあの男は少なくとも強者と呼べる人物ではないということ。


金持ちか?金持ちなのか?それとも何心はチェリーだって言いたいの?


心の中で突っ込まなければやってられなかった。


ふと骨の客を見るとフレアドックに舐められ続けていた。幸せそうな顔をしていた。


私の目はどんどん死んでいく。


幸い彼ら以外に客が居ないのが救いだが他の客に言われたらなんて説明すればいいのだろうか。


カランコロン


2度あることは3度あるというが今度は誰が来るんだと身構えているとただの女性だった。


「このお店に猫ちゃんはいるかしら?」


「はい居ますよ、この子です」


やっとまともな客が来たと内心喜びつつ。客に猫系モンスター【猫又】を進める。


「じゃあフリータイムでお願い」


女性が椅子に座った瞬間彼女の足が魚の尾びれになった。


「にゃん」


猫又はガシガシと尾びれを甘噛みしていた。


(やっぱまともな客じゃ無かった!!)


胸中穏やかでは無い。私の気は余りにも持ちそうに無かった。


カランコロン


さて次は魔王でも来るのか?それともドラゴンか?


もはや投げやり気味に客を見る。


「ココニヒツジハイマスカ」


「……」


「テンシュ?」


真っ白なゴーレムがそこに穏やかな雰囲気を醸し出し店主に話しかけていた。


「もはや生物の部分すら無えよ!」


「ムムム、ヨクミレバマナブドノニオーレジドノ、イーヨドノマデイルデハナイカ」


え、みんな知り合いなのみんな顔を見て思い出したって感じで手を振ってるけどそうなの


「失礼しました羊はこちらです。」


「フリータイムノモチコミワタシデ」


「へ?」


「ワタシはソルトゴーレムダ」


羊に限らず生物は塩を求める。たまに岩塩なんか舐めさせないと病気になったりすることもある。その知識はあって当然なのだがゴーレム自ら食べられに来るなんて聞いたこともない。


「あ、はいお水出しときますね」


そそくさと厨房の逃げる事にした。


カランコロン


よしも誰が来ても驚かない。大丈夫!


そう心に決め込むと客を見た。


「あのうここに夫が来てませんか?」


カオスな店内に似つかわしく無い綺麗な10代の女性だった。


「夫?」


ふとそれに該当しそうおっさんを見る。彼はまだモフリンをモフモフしている鮮やかな手つきである。


「あ、彼です。料金は支払わせますのでちょっと連れ帰って良いですか?」


「どうぞご自由に」


ゴキリという音と共におっさんが苦しみ出した。


「え、ちょアメリア辞めて、新婚に疲れた俺に癒しを来れ」


「私達という者が有りながら何やってんですか!」


そういえば聞いたことがあるなんでも純愛(ヤンデレ)の女神に加護を受けた女性二人が同じ男性を愛してしまったが故に二人監禁されてしまった哀れな錬金術師が居ると確か一人は姫騎士のような王女様でもう一人が王立学園トップの成績を誇り鬼のような強さで当時の王国武闘会の優勝者である旦那を尻敷いた女性だったと聞かされている。


錬金術師なら先ほどの魔力を吸収できたのもできるかもしれないと思った。彼らは魔力の封じ込めた魔道具を作ることができるのだからその逆もできてもおかしくは無いだろう。


男性は女性に連れて行かれ帰って行った。


「ハハハ、アイカワラズダナ」


羊にペロペロされながら笑うソルトゴーレム。

どうやらいつものことらしい


カランコロン


時間的に見て最後の客だろう。すっかり調子を取り戻した私は意気揚々と客の元に向かった。


「私、銀河魔王キウイという者ですが猫は居ますか?」


「何で魔王来てんだよ!!」


キレの良いツッコミが店内に響き渡った。

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冒険者辞めて開業したモフモフカフェだけど変な客が良く来ます スライム道 @pemupemus

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