第3話



少年は自分の部屋のベッドに横たわり天井をぼんやり見ていた。


そして考えるのは、今日大好きな少女から言われた言葉だった。



『無関心』



一体何が『無関心』なんだろう?。


愛美がボクに言うからには、ボクが『無関心』だという事なんだろう。


でも、こんなに大好きだし、好きって言葉にして伝えているし、毎日行動も起こしているのに、どこが『無関心』だというのだろうか?。




少年は目をつぶり、更に考える。


だが残念ながら答えは出なかった。


それはそうだろう、言った本人ですら意味不明な捨て台詞でしかないのだから、意味なんかあるわけないのである。




「…とりあえず、寝るか」


まだ土日があるし、その間ゆっくり考えようと決めて、ボクはそのまま眠りに落ちるのだった。





土日を挟んで月曜の朝、結局訳が分からないままだった。


それでも月曜は当然来るわけで、ボクはいつもの様に通学路を歩く。



そして前方に愛美まなみ由実ゆみさんの背を見つけ、ボクは駆け足で追いつく。


「おーい、愛美まなみ。おはよう」


「おはよう、良太くん。今週も月曜から元気やね?」


愛美の隣に並んで歩いていた由実さんは挨拶を返してくれたが、当の愛美はこちらを見てすらくれない。


でもボクはこんなにキチンと行動を起こしているのになにが無関心だというのだろうか?。



何も言わない愛美の顔が頬を膨らませて、幾分顔が赤い様に見えた。


もしかしたら具合が悪いのかもしれない。


「愛美、大丈夫か?。具合悪いとかないか?」


「………」


相変わらず前を向いたままツカツカと歩く愛美。


横の由実さんが横を向いて肩を震わしてるのも気になるけど、今は愛美だ。



「なぁ、愛美って!」


ボクが愛美の肩に手を掛けると、パァンと手で叩かれ外される。


「………いこ、由実」


「あー、ちょっと。ごめんな、良太くん。また教室でなー」


由実さんがボクに小さく手を振ってくれるが、ボクは振り返すことすら出来ずに、小さくなっていく背中をぼんやり見る事しか出来なかった。




─────キンコンカンコーン♪


授業終了のチャイムが鳴り、短い休み時間が始まる。


ボクは愛美の元へ向かおうと席を立つと、とても嫌そうな顔でこちらを見ている愛美に気付く。


それでもボクは愛美の席へと行き、いつもの様に声をかけるが、愛美は全く返事をしてくれず、由実さんと一緒に教室を出ていった。


そんな様子を見て心配になったのか、クラスメートが「どうかしたの?」って訊いてくれるけど、ボクにもさっぱり分からない。


「もしかしたら体調が悪いのかもしれない?。今日はそっとしておくよ」


「うん、そうだね…いつもの盛り上がりがないのは残念だけど、具合悪いなら仕方ないね」


そしてボクは自分の席に戻り、愛美に何があったかをぼんやり考えるのだった。



昼休みになっても愛美の具合というか気分は治らないようで、ボクが近付いても不快そうな顔をしたままだった。


ボクは一言二言声をかけるのが精一杯で、結局何の返事も貰えないまま席に戻る。


結局今日一日、愛美はボクに何も話してくれなかった。




次の日もその次の日も、愛美がボクに向ける不快そうな目は変わらず、よっぽど具合が悪くて気分がすぐれないんだろうと思うしかなかった。


でも…本当に具合が悪いから、なんだろうか?。


今までももしかしたら、あんな顔でボクを見ていたんだろうか?。



『愛美って照れ屋だから』『キライ嫌いも好きの内ってね』『押せ押せだよ』というクラスメートの後押しもあって、ボクは今まで積極的にアタックしていた。


だからボクの告白を受けてくれないのも、一緒に帰ってくれないのも照れているからで済ませていた。


でも、本当に照れているからだったんだろうか?。


『近付かないで』って何度も言われたけど、あれは冗談じゃなく本気で言ってたんじゃないだろうか?。


『きらい』って本気で思われてたんじゃないだろうか?。


もしそうだとしたら、先週の金曜からの愛美の態度も納得がいく。



いや…でも、そんな事ないよね?。


ボクは薄暗い部屋の中、全然眠れないままだった。

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