第6話
「………ボクさ、今の今まであんなに
横に座る
「クラスのヤツ達に持ち上げられてさ、いい気になって告白しまくって、結局散々傷つけてたとかさ…シャレになんないよね」
やっと顔を上げた良太くんは、どこか自虐的な笑いを漏らしていた。
「でもさ…愛美にボクも謝ろうと思ったんだよ?。でもあんなに怯えられてるのを見てたらさ…もぅ無理でさ…」
再び膝に顔を付け、小さく丸くなる良太くん。
「良太くんは…『好き』の逆って何か分かるか?」
「………え?」
ノロノロと顔を上げ、私を見る良太くん。
「えっと、『好き』の逆は…『嫌い』でしょ?」
良太くんが不思議そうに私を見る。
「じゃあ…いつもキライって言われとったのに平気やった良太くんが、こんな風に落ち込んでるのはなんでなん?」
「それは…」
こっちを見てすごい困った顔をしてる良太くんの頭を抱きしめる…と誰かから怒られそうなので、ここは我慢しておく。
「あのな?。『好き』の逆はな、『無関心』なんやで?」
「無関心…」
何か思う事があるのか、良太くんが何か考える様に真面目な顔をする。
「そんでな?。その『無関心』で苦しんでるの…良太くんだけやないんやで?」
「え?。ボク以外にも一体誰が…?」
こちらを見る良太くんへ、私はちょっとだけドヤ顔で答える。
「今、良太くんが避けてる相手は…誰なん?」
「あ…………でも、ボクは元から愛美から嫌われてたんだし…」
シュンとする良太くんを、私はじっと見る。
「今までって言うけど、本当にそれまでずっと嫌われてたんかな?」
「そりゃ、毎日の様に『キライ』とか『近付くな』とか言われ…あっ!?」
再び顔を上げて私を見る良太くん。
「そう、愛美はちゃんと良太くんの相手をしてたやろ?。『好き』とはちょっと違ったかもしれんけど、『嫌い』でもなかったはずやで?」
「だとしたらさ、愛美はなんで最近いきなり…」
…あ、さすがにその話になりますよね。
これは私にも責任がある話なので、真面目に答える事にする。
「それは…私も悪かったと思ってる。こんな事になるとは思わへんかった。ホントにすまん、良太くん」
きちんと良太くんの方を見て私は頭を下げる。
「いや、頭を上げてください
「いや、止めんよ?。良太くんが『うん』って言ってくれるまで、私は頭をあげへんよ」
明らかに困ったような「あー…」という声が聞こえる。
「今日HR終わったら、体育館の横で待っててくれへんかな?。絶対に愛美を連れて行くから!」
「えっ!?。でも、ボクは愛美から無視されてるし…」
私は顔を上げ、良太くんの方を掴む。
「絶対に愛美も後悔しとるねん!。ただ引っ込みがつかんで意地張っとるだけやねん!」
「あの………由実さん、顔上げちゃってますけど?」
思わぬ良太くんのツッコミに、私は軽く頭を小突く。
「そんな細かいとこはええねん!。とりあえず放課後、絶対待っててな?。絶対やで?」
私は立ち上がり、散々良太くんに釘を刺してから教室へと戻る。
次は愛美の説得だ…頑張ろう。
散々説得してもなかなか「うん」と言わない愛美に、私は強く言う。
「このままやと…今日逃すと、もう2度と良太くんと話できへんくなるかもしれんのやで?。愛美はそれでええの!?」
「………」
まだ踏ん切りがつかない愛美に、私は更に言う。
「大体、良太くんが今まで本当に傷ついてこなかったと、愛美は本気で思うとるん?」
「………え?」
愛美が私を見るので、私はまっすぐその目を見る。
「毎回教室の皆に見られてる中で告白して、毎回断れてたんやで?。何度も何度もキライって言われ続けてたんやで?」
愛美は黙り込み、考え込んでる様に見える。
「そりゃノリで冗談半分なとこもあったかもしれん。でも、あんな風にめげずに、愛美に文句の1つも言わずに真っ直ぐ向かって来てくれたんはホントやと思うんよ?」
「…………」
…これだけ言ってもダメかぁ。
私は「仕方ないね」とわざとらしく大きくため息をつく。
「そっか…じゃあ放課後、私は用事あるから愛美は一人で帰ってな?」
「え?。由実どこいくの?」
不安そうにこちらを見る愛美。
「どこって…来もせんのにずっと待たせるわけにもいかんやろ?。『愛美は2度と良太くんと話したくないから近付かんでくれ』って代わりに伝えたる」
「ちょっと、由実!?」
呼び止める愛美の方も見ずに、私は自分の席へと戻る。
それから少しすると始業のチャイムが鳴り、教室に教員が入ってくるのだった。
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