第4話
木曜日の朝。
ボクはあんまり眠った気がしないダルダルの気分のまま学校へ向かう。
すると、前方に
「おーい、愛美ー」
ボクが駆け寄るも、相変わらずこちらを向いてくれないし返事もない。
「じゃ、じゃあ。ボク先に行くから…」
「え?、良太くん?…じゃ、また教室でな」
由実さんがそう言って手を振ってくれたけど、ボクは振り返すことすら出来ず逃げる様に学校に向った。
教室で自分の席に着き考えていると、しばらくして愛美と由実さんも入ってくる。
由実さんと話している愛美はいつもの様に輝くような可愛い笑顔だ。
それなのに、ボクが見ている事に気付いた瞬間、一気に顔が曇った…そんな風に見えた。
─────キンコンカンコーン♪
終了のチャイムが鳴り授業の合間の休み時間、ボクが愛美の方を見ると、やっぱり不快そうな顔をしていた愛美と目が合う。
そしてボクは、週末を待たずにもう愛美に近づく事すら出来なくなっていた。
週が明けても、ボクは愛美に近づけないままだった。
気付かれない様にチラリと見る愛美はいつも笑顔で、気付いてはいたけれどボクと目があった時だけあの不快な顔をしていた事を実感する。
そう…ボクは本気で愛美から嫌われてたんだ。
浮かれていたボクは気付けてなかっただけで、きっとクラスメート達も分かっていて、面白半分にけしかけてたんじゃないだろうか?。
そう考えると、クラス全員から嫌がらせを受けていた事になる愛美の苦しみはどれだけだったんだろうか?。
今すぐにでも愛美に謝りたい…でもこんな夜に会えるわけもないし、電話で済ますのも違うと思う。
明日きちんと謝ろう…ボクは今日もなかなか眠れない夜を過ごすのだった。
朝早めに家を出て教室で待っていると、教室に愛美と由実さんが入ってくる。
でも、その愛美がいつもと違っていた。
教室を入った時点でどこか怯えたような顔をしてボクを見ていて、当然ボクに声をかける訳でもなく自分の席に着いている。
ボクは机に伏せ、これはなんだと考える。
今までこちらを見てすらくれなかった愛美がこちらを見てくれた…今までのボクなら「やっぱり寂しかったんだろう」と浮かれてた事だろう。
でも、本気で嫌われてたと分かった上だと答えは全く違ってくる…そう、純粋な恐怖だ。
今まで鬱陶しいほどに寄って来ていた嫌いな人間が、行動をピタリと止めているのだ。
これから何をされるのか?、なにを考えているのか?、愛美は今そんな恐怖でいっぱいなんじゃないだろうか?。
いや、だろうじゃない…きっとそうなんだ。
ボクは謝るどころか、目すら合わせれないまま、教室から逃げる様に飛び出す事しか出来なかった。
それから休み時間の度に、チャイムと同時に教室から飛び出す。
別に行きたいところがあるわけでもないので、愛美から見えない場所まで逃げては、廊下でぼんやりとするくらいしか出来なかった。
そんな日々が続いて、とうとう今週もただの一度もボクへと話す愛美の声をきくことなく過ぎていった。
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