スキ≒キライ≠ムカンシン 計算中

更楽茄子

第1話



─────『好き』の反対は『嫌い』じゃなくて『無関心』なんだよ?



こんな話を最初に知ったのはいつだったかな?。


初めてきいた時は「おー!」ってなったけど、誰もかれも言い出すと有難みって無くなるよね。





「だから、良太りょうたはこっち来るなっていつも言ってるでしょ!。どっか行ってよ!」


「そんな風に怒ってる顔も可愛いよ、愛美まなみ。ボクと付き合ってくれ」


愛美が手を突っ張って良太くんを突き放し、いつもの様に2人がじゃれあっている。


クラスメートのほぼ全てが「いい加減結婚しろ」的な雰囲気なんだけど、当の2人は結婚どころかお付き合いにすら進みそうにない。


いつものパターンだとそろそろ…。



「もー、由実ゆみもアイツになんか言ってよー」


「いやいや、愛美もそろそろ諦めたらええやん?」


私のその言葉に、クラスメート達が妙に盛り上がる。


そしてお調子者の生徒が、手にスマホを握って、私にしがみついてる愛美の方へと近付いてくる。


「毎朝新聞ですが、ご結婚はいつ頃ですか?」


「だから、そんなんじゃないって!」


愛美が声をあげて、クラスのみんなに抗議をしていて、それを見てる当事者の1人の良太くんは楽しそうに見ている。



─────キンコンカンコーン♪


チャイムと同時に正面の引き戸が開かれ、数学の先生が入ってくる。


「お前ら、チャイム鳴ったぞー。いい加減に席に着けー」


年配の先生の言葉に、クラスメートが「わー」っと各自席に戻って行く。


もちろん私にしがみついてブツブツ言っていた愛美も、「また後でねー」と手を振りながら席に戻って行く。




「愛美。ボクと一緒に帰ろう!」


「パス。1人で帰れば?」


いつもの様にバッサリと断られるも、当の良太は「そうか、じゃあまた明日なー」とブンブン手を振って教室から出ていく。


愛美は一応胸の前で手を振ってるし、いい加減認めればいいのにと私はぼんやりと思う。


「さ、由実帰ろ?。今日はちょっと本屋に寄りたいんだよね」


「寄り道しとったら、また色々言われるで?。ちゃんと一回戻ってから出ような?」


私の意見に愛美は素直に「はーい」と答える。


こんなに素直なのに、なんで良太くんにはあんなにひねくれるんですかね?。




「でもさー愛美。いい加減にせんと、本当に良太くんに嫌われるで?」


「本当も何も、私はアイツがキライなの!」


並んで家路に帰っている愛美が、プイっと私から顔を逸らす。


こういう行動が一々可愛いから本当にずるいと同性ながらに思う。


「大体アイツもさ、毎日毎日キライって言われてるのに、なんでちょっかい出してくるのかなー?」


見た感じまんざらでもない様にしか見えないけど、一応嫌ってるらしいですよ?。



私はほんのイタズラ心程度の軽い気持ちで、ちょっと話を振ってみる。


「そーいえば愛美、こーゆー話は知っとる?」


「んー?。どんな話?」


私が何を話し出すのか、興味深そうにこっちをジッと見る愛美…いつも通り可愛い。


とりあえず一回抱きしめて頬摺り2回、それから話を続ける。


「えっと、『好きの逆は嫌いじゃなく、無関心』ってやつ。よく言うやろ?」


「あー、よく聞くけどさぁ…でも、それってホントなのかな?」


腕を組んで「うーん」と頭を捻っているので、私はポンと肩を叩いて言う。


「だったらさ、明日試してみたらいいやん?。それで良太くんが来んくなったらもうけやん?」


「それは…たしかにそーなんだけど…」


どこか乗り気じゃない様にも見える愛美。


「あれあれ?。愛美さん、実は良太くんが来なくなるのは寂しかったりします?」


私がちょっとニヤリとしながら見ると、頬を膨らませて、不満げに私を見る愛美と目が合う。


「い、いいわよ!。やったろうじゃん!。明日はガン無関心してやるんだからっ!」


「なんやねん、その『ガン無関心』って。変な言葉作んな」


私と愛美はそんな風に、くだらない話をして、笑いながら家へと戻るんだった。


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