第2話



そして日が変わって金曜日、今日も愛美まなみと私は並んで学校へ向かってる。


「見ときなさいよ、由実ゆみ!。ビシッと決めてやるんだから!」


「そっか。がんばれがんばれ」


鞄を持ったまま、胸の前で小さくガッツポーズをする愛美。


可愛すぎるので、とりあえず一回抱きしめて頬摺りをしておく。



「おーい。おはよう、愛美ー」


私達の後方から元気な男子の声がする。


振り返るといつものように、少し息を乱した良太りょうたくんが走ってこちらへ向かってきた。


「おはよう、良太くん。今日も元気やね?」


「由実さん、おはよう。今日もいい天気だね」


…私には天気程度の話かいっ!。


私と愛美のこの対応差よ!…まぁ、いいんですけどね。


ただ、隣の愛美がこちらを向かずに、前を向いたままツカツカと歩を進めている。



「愛美?。どうかしたのか?」


良太君が心配そうに愛美を見るけど、相変わらず返事はない。



何度か声をかけるも全く相手をされなかった良太君は、小走りで愛美の前を塞ぐ様に立つ。


「なぁ?、愛美どうかしたのか?。何かあったのか?」


「……………」


前を塞がれて立ち止まりながらも、相変わらず何の返事もしない愛美。


「愛美?。なぁ、愛美!?」


「無関心っ!!」


愛美が強い口調で良太君に言う。


「…………え?」


「さっ。由実、いこ?」


言われた良太君は何を言われたのか分からないまま固まってしまったので、その横を私達は抜けていく。


ちょっと振り返ると良太君は、まだ呆然としたまま離れていく私達の背中を見ていた。




それから、いつもの様に休み時間の度に寄ってくる良太君を、愛美は「無関心!」とだけ言って切り捨てていく。


二度目からやっと何をしてるか理解できた私は、笑いを吹き出さない様に堪えるのにとても苦労した。



そしてHRの後にまたいつもの様に一緒に帰ろうと良太君が来たものの、やはり「無関心」の一点張りで切り捨てていく。


「んじゃ、良太君。また来週な?」


「あ、あぁ。由実さん、また来週…」


力なく私に手を振る良太君へ、私は小さく手を振り返す。


「ほらー。由実、いくよー?」


「はーい。すぐいくー」


先に教室を出た愛美の後を、私は小走りで追いかけるのだった。





「思った以上に効果あったね!。すごいね、無関心!」


愛美が少し興奮気味に私に話してくる。


「確かに、今日は良太君ずっとタジタジやったもんな」


「うんうん。おかげで久々にゆっくりと休み時間を過ごせたよ。クラスメートからもからかわれなかったし、すごいよね」


私は面白いからこのまま放っておこうとも思ったけど、来週はもぉ我慢できずに笑ってしまう予感があったので、愛美に言う事にした。



「ところでさ愛美、その無関心なんやけど…」


「ん?。なに?」


愛美がちょっとドヤ顔で私を見てきたので、頭を抱きしめて髪の匂いを5回ほどくんかくんかしておく。


「その、な…無関心って言ってどうすんねん!」


「………え?」


何を言われたか分からなかったのか、愛美が目を開いて軽く固まる。


「いやいや、無関心はどう考えても行動やろ?。それを言ったら無関心にならんで?」


「………あっ!!」


今気付きましたっていう愛美の顔を見て、私の我慢はついに限界を超えてしまい、私は声をあげて笑いだしてしまった。


笑い過ぎてちょっと滲む視界の中には、頬を膨らませてこっちを睨みながらも、恥ずかしいのか顔を真っ赤にしている愛美がいた。


「ごめん、ごめんてー。笑って悪かったって。ほら、ムーちゃん饅頭おごってやるさかい、選びぃ」


「………じゃあ、ハムエッグ」



それから私達は大通りを渡った先の小さな店舗に行き、ムーちゃん饅頭のハムエッグを2個買い、店内で食べる。


とりあえず愛美をからかうネタ代と思えば、このムーちゃん饅頭も妥当だろうと思うのだった。

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