over extended.

 いつもの窓辺に、座って。海を眺める。


 自分の子供が、二人で遊んでいる。


たかなにいちゃんっ」


「よし、泳ぐか、さら


「うんっ」


「いいか、凪。ぱぱとままの教えを忠実に守れよ」


「うんっ。およぐときは、おぼれてはならないっ」


 泳ぎはじめる。


「泳ぎはじめたぞ、まま」


「あら。ほんとね」


 彼女。子供を抱えながら、窓辺に座る。


「溺れたら助けなさいよ、ぱぱ」


「もちろんだ」


 あれから。徹底的に泳ぎを習って、救命の講習も受けた。今なら、どんなに遠くで溺れても、助けに行ける。


 彼女の腕のなかの子供。たのしそうに、わらっている。


わかつきも、はやく大きくなって泳ぎたいか」


「あなた。そろそろ四人目を」


「はやくないか?」


「あなたが病院で寝てる間に、考えてたの。行けるところまで行くから。いいわね」


「押しが強いな」


「好きなんでしょ?」


「好きだね。大好きだ」


 海と凪が、陸に上がってきた。わかめや貝をぶら下げている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛されなかった窓辺、その日、果たされなかった願い 春嵐 @aiot3110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ