第3話 実録‼ 幽霊船に遭遇した話
香竹が一人で勝手に怖がっているだけの夢の話が続いたので、今回はちゃんとした心霊体験を。
大学(一般大)を出た後、1年だけ海上自衛隊にいたことがあり、広島県のE島という離れ小島で教育を受けました。
このE島というところは市井の人々がイメージする自衛隊のキツイ印象を100倍に濃縮したようなところで(泣く子も黙る海軍兵学校!)、ここで体験した本当の意味で怖い(いや、ある意味楽しくて仕方がない)エピソードをまとめると本が一冊出来そうな勢いなので今回は割愛。
その訓練の一環で、1か月間護衛艦実習(国内巡航その1)というのがあり、とあるかなり古い世代の艦に実習員として乗り組んでいた時の話。
時刻は奇しくも午前2時。星一つない海の上。
丁度その時香竹は灯一つない真っ暗な艦橋で夜間航行訓練(ナイトトランシッドだっけ? 忘れた)というのをしており、毎日朝の4時半から翌朝4時まで訓練(休憩・睡眠時間はあることはありますが寝られません)、起きてる間は始終怒鳴られ●られ●っとばされでフラフラの状態で副直士官実習からレーダー員実習に番替したところだった(この副直士官というのは3次関数をそらで使いこなせる程の理数脳でないと務まらないので、さんすうレベルで頭が止まっている香竹は「リコメンド遅えよボケ!」と隣にいる本物の副直士官に小突かれ航海長からは怒鳴られ半べそ掻きながら持ち場を離れた)。
しばらくして艦橋の窓の向こうの進路方向に灯の塊みたいなものが近づいているのが見えたのだけれど、艦は外洋を航行しているところで、岬や街の明りではない。どんどん近づいてくるので民間船と思いレーダーを注意してみるが、それらしき船影はなし。というか、誰も気づいていない。見張り員に就いている同じ実習員からも報告がない。隣で操舵している海士長に「あれ!」って指さしても「何言ってんだ」って顔をされた。
そうこうしているうちに目の前に満艦飾のクルーズ船が視界一杯に近づいてくる。艦の3倍以上は優にある大きい船が、ありえないほど近接して右舷をゆっくりと抜けていく。クルーズ船の丸窓一つ一つが眩しいくらい目の前を流れ去っていく。波しぶき一つ立てず、恐ろしく静かに目の前を通り過ぎていった。
ちなみに当然のことだけど艦に搭載しているレーダーは艦橋の1機だけではないので、接近してくる漂流物があれば小さな流木一つでも必ず見張り員やCIC(というとっても殺伐とした部署が艦の中にある)から報告は上がるはずなのだ。それ以前に前後の僚艦が気づかないはずがない。
念のため後で確認してみても、あの時間帯にあの付近を航行していたクルーズ船はなかったようです。
あの満艦飾の船は一体何だったんだろう……。
というような話。
※当時の仕事柄書いちゃいけないようなことは書いていないつもりですが何かご指摘があればすぐ削除します。
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