第4話 実録‼ 「3日のお姉さん」の話
香竹が小学校のまだ低学年くらいの頃の話。
夏休み前の3日間だけ一緒に遊んでくれたお姉さんがいた。
多分小学6年生くらいだと思う。ショートカットに眼鏡をかけた男の子のような女の子だったけど、当時は物凄い年上のお姉さんに見えたもので、どういうきっかけで一緒に遊んでくれたのかは忘れたけど、その女の子が下校途中の遊び場で香竹が来るのをわざわざ待っていてくれて、日が暮れるまで一緒に遊んだ思い出が今だに懐かしい。ある意味人生のピークだったかもしれん。大人になった今は誰も遊んでくれない。
その遊び場所というのが、決まって通学路の途中にあるがけ崩れの跡地のようなところで(今なら通行止めになるレベル、超危険)、お姉さんと二人で何をしていたかというと、藤の蔦を伝って地上30mの高さまでよじ登っては奇声を上げながら駆け下りたり、途中でコケてゴロゴロ転がり落ちるというゴールのない荒業を競い合っていたのです。微笑ましいですな。それを下校の15時くらいから日が暮れる18時くらいまで今勘定してみると実に3時間も延々と繰り返していたのですね。楽しい時間はあっという間です。
そして3日後(最初にも3日間と書きましたが今これ書いていて本当は何日だったかあやふやになってきたので書き物らしくきっちり3日間ということにします)、明日から夏休みという最後の日に特に休み明けまでのお別れの挨拶をするでもなくそれきりもう会うことはありませんでした。お姉さんの名前もクラスも聞かずじまいでした。
ところがそれから2年、3年と経つうちに不可解なことに気がついた。
3年生から同じクラスになった女の子の一人に、ショートカットで眼鏡をかけたひょろっと背の高い子がいたのだけど、4年生、5年生と進級するうちにその子がどんどんそのお姉さんと瓜二つになっていく。
その子のお姉さんは知っているが似ても似つかない。6年生に上がる頃にはその子はもう「3日のお姉さん」になっていた。内心それが気になってしょうがなかった。
ンなら本人に聞いてみりゃあいいじゃねえかよとなるところだけど、これが香竹と仲悪かったんだ。喧嘩して1回も勝ったことない。てかこの年頃の女の子はだいたい男子より身体が大きいしなんか怖いし、決まった女子グループで集まってはやたらと帰りの会とかで男子を吊し上げにしてきたもんだ。微笑ましいですね。
それから「3日のお姉さん」には二度と会うことはなかったのだけど「3日のお姉さん」にそっくりの同級生は香竹と同じ中学校に進み、「3日のお姉さん」がブレザー着たらこうなるんだろうなーという姿かたちで香竹が最後の楽しみにとっておいた給食のデザートのリンゴを強奪して目の前でボリボリ食ったりし、「3日のお姉さん」が大人になったらこうなるんだろうなーという晴れ着姿で何事もなかったかのように成人式で話しかけてきたりした。
年取るといろんなこと思い出しますよね。
というような話。
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