実録!! はなしはんぶん。
香竹薬孝
第1話 実録‼ 怖い(?)夢の話 その1
よく覚えていないけど、幼少の頃の香竹は周囲の大人が引く程感受性の(?)強い子供だったそうで、新聞の折り込みに仏具屋さんのチラシが入ってくるとお仏壇やら観音様の写真を切り抜いて部屋中に貼り付けたり(父が剥がそうとすると泣きながら大暴れしたそうな)、自宅のガスコンロを買い替えたときは自分で古いガスコンロの遺影を作って一人でガスコンロの葬式を行ったりと人前で奇矯な振る舞いに及んでは両親をハラハラさせていたらしい(※今はそんなことしませんよ。こんなだけど)。
そんな頃によく見ていた夢があった。
まず、うつらうつらと寝入り端にパッとアスファルトから生えた真っ赤なチューリップの映像が浮かぶ。これが出てくると「ああ、また怖い夢を見るんだな」と直ぐに分かって怖くてたまらない。
この後すぐに暗転する。真っ暗で何も見えないのだけど、自分が何かすごい勢いで水の中を流されていくのが判る。真っ暗なトンネルの中を轟轟、轟轟と、凄く恐ろしい轟音、濁流に飲み込まれたような感じで上下左右に揺さぶられ、どんどんトンネルのずっと奥に頭から飲み込まれていく感覚が、只々怖い。
その先に出口があるのは何故か夢の中でも判っていて、そこから出ればこの暗闇も轟音も終わることも分かっているのに、ここから出てしまったら、もっと恐ろしいことが待ち構えている気がして、言葉通り夢中で泣き叫ぶ。
とうとう出口から飛び出してしまい、目の前が真っ赤になった途端、「ギャーッ!」と自分の絶叫で目が覚める。巻き添え食って起こされた両親もまたかよという顔で目を擦る。
こんな夢をかなりの頻度で見た記憶があるけれど、物心つく前にある時ぱったりと見なくなった。
しかし未だに鮮明に記憶に残るほどそれは恐ろしくも鮮やかな悪夢だったわけで、そのせいか小学校高学年までプールに入っても泳ぐどころか水に顔も浸けられなかったし(今は15㎞泳げますが)、未だにトンネルとか狭いところを前にすると身が竦む(三陸道の気仙沼~釜石間はトンネル長いから嫌い!)。
但し今でも暗いところは嫌いかどうかというと部屋が明るいと家にいても職場にいるような気がして落ち着かないのでいつしか暗がりを好む内向的な大人になりました。
以上、特にオチも何もない香竹が小さい頃よく見た夢の話でした。結局怖いのは夢見て魘された香竹本人だけでしたね。
ただ、今になってふと思うのは……これ、赤ん坊がお腹から生まれてくる瞬間の記憶なんじゃないだろうか……。
というような話。
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