第1話 発見
「貴女のやりたいことは何?」
学校に通って居いる時に何度も言われた言葉だ。
「わかりません。」
その質問には、いつも同じ答えを返していた。
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自然に存在する魔力を吸収出来る体質の者は、魔女と呼ばれて"学校"に入校させられる。
魔力を吸収出来るという事は、この世界でも特別な事だ。
放っておけば吸収に歯止めが掛からず、身の回りの魔力を吸い取り文字通り"枯死"を引き起こす。
それだけならば、まだ良い。溜まった魔力が暴走すれば災害が起こる。それも甚大な。
過去の文献を紐解けば、そんな事例がいくつも記載されていた。
だが、彼らもバカではない。彼らは制御方法を必死探した。自分の命と大切な者達の命がかかっているのだ。
そして幾千もの失敗と一握りの成功から制御方法を手にいれた。
[制御出来るなら利用も出来る。]
制御に成功した先人達は、そう考え実施した。
これも幾多の失敗と成功を繰り返し、書物に残すことで次の時代へ繋がれていった。
"学校"は、その集大成だ。
[過去を学び、今を知り、未来を思索する。]
この学校に通う者達は、この"学校"で学び、鍛え、社会へ出る。
社会では、生産、農耕、インフラ等の様々な部分に魔女達が関わっている。
これも、その力を忌避することではなく、受け入れる事で迫害を避ける為に先人達が努力した結果だ。
その為、"学校"では定期的に社会的な貢献先を斡旋するため進路相談が行われている。
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「まぁ、まだ時間はあるわ。ゆっくりと考えてちょうだい。きっと何処かに道はあるはずよ。」
「はい。そうだと良いですけどね。」
席を立ち廊下に出ると先ほどの教師の微妙な微笑みが気に食わなかった。私の何を知って[きっと何処かに道はある。]などというのだろう。
ある、きっとある。そこは間違っていない。ただ、その道が正しいかは誰も教えてくれない。教えられるわけが無いのだ。誰がどう言おうが、歩くのは自分だ。歩いた事によって何かが起きれば、波紋のように広がり周りに影響する。その結果を誰が分かるものか。
ならばできる限り納得できる道が良い。誰に指示もされず、自分だけが進む道。
教師は、少しでも才能を見つけると褒めちぎり、また指導し進むべき道を示す。それは自分で選んだように見えてその実、"教師に誘導された道"なのだ。
そんなものはまっぴらごめんだ。自分の道ぐらい自分で探す。
そのための一分一秒が惜しい。図書館に行き封書庫の中に行きたい。あそこには異世界の知識が詰まっている。[封書庫]といかにも禁忌のような名前がついているが、特段そんなことはない。誰かがそう呼び始めて誰かがそれを引き継いだだけのことだった。
封書庫は、[転送]の魔法を使った際に違えて違うところに繋がってしまった時に、出てきた物品の保管庫だ。ただ、今では[転送]の魔法は解明され。街中で売られている。そのため、ここ数十年は物品が増えたことがない。
封書庫の本は、図書館で手続きをすればいくらでも入れるし、持ち出しに特に制限がない。ただ、誰も読めない、意味が分からないため、持ち出されたことがない。
過去に何人かが挑戦したようだが、翻訳された本が無いという事はそういう事だろう。もし、翻訳に成功していればこの知識の城たる"学校"にないわけがない。
だからこそ一刻も早く封書庫に行きたい。あそこには"読みかけの本"がある。
「絶対に漏らすな。この世界では。ただ、もし我が家系の者がこの言葉を使った者と会った場合は話し、その者を助けよ。」
先祖から脈々と受け継がれている遺言、ルールは今も紡がれている。その言葉と共に伝えられた「エイゴ」という言葉と辞典。
初めて封書庫に入った瞬間に分かったのは、そのおかげだ。ここの本は「エイゴ」で書かれている。何冊か開いてみたが、「エイゴ」を私達の言葉に変換する事ができなかった。絵と吹き出しが書かれているものもあるが、その絵が何を示しているのかが分からなかった。
そんな中に一冊だけ、その本は意思を持っているかの如く、足元に落ちてきた。
表紙には、[超音速飛行]
運命という言葉を信用できるなら、まさこの時だった。
超音速の魔女 ジョン・ドゥ @jwowl
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