超音速の魔女
ジョン・ドゥ
プロローグ
「始動確認・・・よし。」
目の前のパネルを確認し、つぶやく。パネルには、左からシンプルに【始動】と書かれた文字とその下に小指の爪ぐらいのランプ、【回転数】と書かれた、100刻みに白い線、1000毎に太くなっているその線が放射状に広がっており、赤い針が付いたメーター。【速度】と書かれている同じようなメーターが横にあり、最後に【高度】と書かれた長細い枠に、白い横線で100単位に書かれたメーターがある。
「回転数・・・1000回転まで3,2,1。よし。」
回転数についている針が、1000の位置で止まる。
「"魔導エンジン"、出力確認。1700回転までアップ・・・よし。」
【回転数】の針が時計回りに動き、1700の位置で止まる。
「出力確認完了。前方障害物無し。視程は、3km。"魔導レーダー"に障害物無し。」
※:実際には単位は違うが現代に合わせ翻訳する。
大地につけていた両足を"箒"に取り付けたフットペダルに乗せる。そうすると、"箒"がゆっくりと確実に前に進む。
ただの箒ではない。箒の束ねている部分に、不似合いな金属で出来た筒が取り囲むように6本取り付けられ、それぞれの筒の後ろから青い粒子が少しずつ流れている。柄の下には、長細い筒が取り付けられており、太めの紐によって二か所で柄に固定されていた。
そして進みだしたことが分かると、両手でしっかりと箒の柄をつかみ、身体を柄に密着させる。
「出力アップ・・・V1は170km/h。」
周りの景色の流れが加速する。【速度】と書かれたメーターの針が時計回りに回っていき、170と書かれた文字まで達する。
「V1・・・ローテ―ト・・・」
箒の柄を上に引くように身体を持ち上げると、その動きに箒も同調する。
「出力70%。一気に高度を上げる。」
60度ほど上を向くと、箒の後ろが青い光を放ち更に加速を続ける。
その間も、【回転数】【速度】【高度】と書かれたメーターの針が上がっていく。
「速度、300で安定。高度、300・・・400・・・」
読み上げる声が段々と辛くなる。薄く魔力壁が張ってあると言っても身体にはとてつもない加速度がかかっている。気を抜いて手でも放したらそのまま飛ばれされてしまうだろう。
「目標高度・・・1500!水平飛行に入る。」
箒の柄を前に倒し、地面に対して平行に飛行する箒。
その上には小柄な魔女が乗っている。
皆が知っているであろう魔女は、大きい帽子に長いローブ。色は暗色をイメージするだろう。
しかしこの魔女は、目の部分にはゴーグル。口元はマフラーで隠している。
上半身は、厚手のジャケットに下半身も厚手のズボンを履いている。
我々の世界でいうところの少し昔の飛行機乗りの格好だ。
「飛行安定。機能正常。これより、35回目の実験に入る。目標は、音速の壁!」
そう宣言すると、紐で止めてあった長い筒が切り離される。
「外部魔力タンク投下確認。出力MAXへ!」
先ほどまでは、小手調べだと言わんばかりに加速を続けていく。
そして魔女は。
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