その六、モラトリアム

<ツッコミ>

はい。こんにちは。

今日はね。

モラルの欠片もないボケの阿呆が、とっておきの話があるらしいんですよ。


<ボケ>

はい。こんにちは。

そそ。この前、凄いヤバい事になりそうだったんですよ。

執行猶予なしで、待ったなしみたいな。

一体、なんだと思います?


<ツッコミ>

なんだろうね。

なんだろうね。

もしかしてアレか。オカマの女将が狼になったとか?


<ボケ>

おお。

カミカミのツッコミは珍しく神がかったリリックだな。

ちゃうわ。

財布を拾ったのよ。財布。


<ツッコミ>

ほう。届けないといけないね。警察に。

最低限のモラルよ。モラル。


<ボケ>

もちろん俺もそう思ったよ。

届けないとネットで叩かれ炎上するってさ。

ヤバいでしょ?


<ツッコミ>

はい。

ちゃうちゃう。

炎上とか関係ないでしょ。

拾った財布を届けるのは人間として最低限のモラル。


<ボケ>

もちろん、もちろんだよ。

モラルだよね。

モラル。

炎上とか関係ないよね。人間としての最低限のモラルだよね。うん。うん。


<ツッコミ>

そうですよ。そうです。


<ボケ>

で、その拾った財布、凄い厚かったのよ。

いくら入れば、そんなに厚くなるなのかって思うほどに厚いわけ。

もう俺の心も熱くなっちゃってさ。松岡修造並にね。


<ツッコミ>

でも届けたんでしょ。

モラル。

モラル。


<ボケ>

はい。

中を見ました。

焼き肉食って、読みたかった長編漫画を全巻買えるってワクワクしながらね。

モラルよりも、もらっとけってさ。


<ツッコミ>

モラルッ!

モラルッ!

もらっとけじゃねぇ!!

上手くねぇ。


<ボケ>

いや~、欲望には勝てんのですよ。

モラルで焼き肉は食えんと。

モラルで漫画は読めんと。


<ツッコミ>

モラル大事。

モラル大事。

お巡りさん、ここにネコババ泥棒がいます~。

逮捕して下さい。逮捕、逮捕。


<ボケ>

いやいや、大丈夫。大丈夫。

炎上もしないし叩かれもしないから。もちろん逮捕もされないから。


<ツッコミ>

なんで?


<ボケ>

だって、その厚い財布の中には名刺大の紙が一杯入っていただけだもん。


<ツッコミ>

紙?

それお札じゃないよね?

なに?


<ボケ>

ハズレ、残念でしたと書かれた紙だわさ。

それが数百枚入ってたの。


<ツッコミ>

ハズレ。

当たりもあるのか?


<ボケ>

他には、また挑戦してねって書いてある紙もあったぞ。


<ツッコミ>

アイスの当たりかッ!!

でも良かったね。逮捕されそうにないよ。


<ボケ>

うん。そうだね。多分、ギリギリセーフ。セーフだよね?


<ツッコミ>

まあ、お前にモラルを求めた方が間違いだったけど、多分、ギリギリセーフ。


<ボケ>

でも思ったんだよ。

そんなハズレなんて紙見てさ。


<ツッコミ>

なにを?


<ボケ>

今度はハズレじゃなくてさ。

当たりを引こうって。


<ツッコミ>

当たりッ!?


<ボケ>

うん。むき出しの札束が落ちてないかなってさ。


<ツッコミ>

モラ~~~ルッ!!!!

アウト。

アウト。

ギリギリもなにもアウト。

スリーアウトチェンジッ!!

炎上して叩かれて逮捕されろ。

もう付き合いきれんわ。

ありがとうございました。

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ネタ帳 星埜銀杏 @iyo_hoshino

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