第5話:復讐

 私は左手の剣を王太子に投げつけ、右手に持った剣で敵の反撃に備えつつ、左手に全魔力を蓄え叩きつけました。

 命を失う事も覚悟した全魔力投入が功を奏したのか、雌豚の顔を柘榴のように破裂させる事に成功しました。

 女にしては美しかった顔が、見るも無残な顔となりました。


「ネヴィア!

 おのれバーン、死にさらせ!」


 全魔力を一度に放出したせいでしょう、全く力が入りません。

 ネヴィアを殺した私に激高した王太子に備えることができません。

 しかも足からも力が抜けてしまい、その場でガクリとしゃがみ込んでしまいましたが、それが幸いしたようです。

 私の顔をネヴィアと同じように叩き潰そうとした、王太子の一撃が致命傷にはならず、左頬をザックリとえぐり、頬骨を露にするだけで済みました。


「ギャッホッグッ!」


 王太子、いえ、ウィリアムがどす黒い血を吐いて斃れました。

 身体がピクピクと痙攣していますが、もう死んでいるのが明らかです。

 身体の皮下がグチャグチャに潰れているのですから。

 ウィリアムだけでなく、視界に入るセント・ラフス皇国の兵士全てが同じ状態でしたが、これは天罰だと直ぐに分かりました。

 神々から直接お言葉があったから間違いありません。


「痛い思いさせちゃってごめんね、女房が五月蠅くてね。

 でもずっと見守っているから、本当に大変な時は助けるから安心してね。

 教会と貴族の裏切者は全員殺しておいたから、もう大丈夫だよ。

 皇国の連中は、女房が五月蠅いから殺せなかったけど、そのうち何とかするね。

 じゃあまた女房の目を盗んで会いに行くからね」


 本当に神々の恐妻ぶりには困ったものです。

 まあ、それでも、男同士に子供を授けてくださるのですから、文句は言えません。

 前世に比べればずっと幸せな環境です。

 それに、この国に侵攻した兵士と、国内の裏切者たちに天罰が下ったのですから、外国の連中も今後は手出しはひかえるでしょう。


 国王陛下と王配殿下を助け出して、教会の体勢を立て直して、今度はこちらから攻撃を仕掛けてもいいですね。

 男同士のカップルだから戦えないと思っているのなら、二度とおかしな真似をしないように、激烈な報復をして、その思い違いを正してやりましょう。


 それにしても、ようやく自分の子供をこの手に抱けると思ったのに、残念です。

 しばらくはショックで誰も愛せないでしょうが、いつかは心の傷も癒えて、新しい誰かを愛せるようになるでしょう。

 その時こそ、この手に自分の子を抱いてみせます。

 

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転生聖賢者は、悪女に迷った婚約者の王太子に婚約破棄追放される。 克全 @dokatu

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