第4話

 僕は、白骨体の大軍に追われながら気絶した所、近くにあった村に助けられ、宿屋に連れ込まれた。



 宿屋の店主は僕が目を覚ますとすぐに宿泊代を要求してきた。勝手に助けておいて、宿代は自腹なんて。僕は少し顔を顰めるが、宿屋の店主は僕に働いて金を返せと言ってきた。



 不本意では有るが、白骨体を村まで連れてきてしまった事は正直悪く思っている。僕はこの宿代を迷惑料だと思って働く事にした。



 僕は一日中宿屋で客の呼び込みとして働いた。これによって店主の熱い語りと働きが合わさって呼び込みの極意を習得した気がした。



《レベルアップしました》


Lv6→10


【体力】:400 【筋力】:70


【速度】:45  【感覚】:25


【知能】:130 【精神力】:145


《スキルを習得・合体しました》


【勧誘】Lv1

(【交渉】Lv1+【呼び込み】Lv1)



 漸く仕事が終えると、宿代と一緒に寝泊りに必要なお金も一緒にくれた。



「良くやったなぁ! ほらよっ、回収できた宿代とおまけだ」

「ありがとうございます!」

「休憩がてら隣の酒場とか行ってみたらどうだ? お前、見るからに痩せ細ってるし、まともなもんも食ってねぇんだろ」



 そうして僕は宿屋に感謝しつつ、教えられた酒場に向かった。



 宿屋の店主に言われたとおり、僕は此処に来てから一日中何も食っていない。店主から若干のまかないも出たが、あくまでも働いた分がマイナスにならない程度の質素なまかないだった。



 ただ、痩せ細っている理由はまた別である。



 僕は酒場に入ると、何故か物凄い威圧感を感じた。客の視線だ。僕の酒場イメージではもっと賑やかな雰囲気を想像していたが、どうやらその雰囲気は僕の所為で壊れてしまったらしい。



 勿論、酒場に入る前までは楽しそうな話し声が聞こえて居たのに、僕が入った瞬間、客の声は一瞬で止み、ほぼ全員の視線が僕に突き刺さった。



 そう狼狽ていると、またあの表示が浮かんできた。



《現在の精神力では貴方の精神状態に異常を起こします》


《この空間に同調するには、精神力が200以上必要です》

《現在、145》



 何だよそれ。僕はその表示を見て最初に思った事がそれだった。まさか本当にこの数値は僕の心まで読み取る気か? 



 いや、もしそうだとしたら、レベルが上がる度に精神力も同時に上がるのはおかしい……。



 酒場の客視線から伝わってくる邪魔者を排除しようとする感覚は、自分の足を前に出す力を弱らせて行く。



 だが僕はそのまま、歩をゆっくりと進ませ、一番奥のテーブルの席に座った。



 そして僕は客が漂わせる嫌な雰囲気を何とか押し除け、メニューに書いてある最も馴染み深い物を頼んだ。サンドイッチとスープだ。



 何のサンドイッチなのか、何のスープなのかは、最早入っている食材が見た事が無い為何とも言えないが、安いし、あとこんな雰囲気の中お腹いっぱいにも食べたく無い。早く済ませる為にこの二つを頼んだ。



 料理が来て、スープを一口食べようとした瞬間、酒場の客の一人が突然ブチ切れて僕の前まで来る。



「いい加減にしやがれっ!! 此処はガキが来る場所じゃあねぇんだよ……」



 僕の人生は本当にどこまで理不尽なのだろうか。悔やんでも悔やみ切れない。



「いや、これでも僕二十歳超えてますけど……」

「あぁん!? 口答えかゴラァ! てめえが居ると酒が不味いったらしゃあねぇ。こんな安っちいもん頼みやがって、さては金も持ってねぇんだろ? なら尚更帰れぇ!!」

「僕は貴方達に迷惑も一つもしていません。たたこの酒場に入っただけです。何故怒られなくちゃいけないんでしょうか?」

「あぁ、もう酔いが覚めて来たわ……お前殺されてぇの?」

「死ぬのだけは勘弁ですね。貴方も他のお客さんに迷惑ですし、此処は落ち着きませんか?」



 僕は恐怖で震える身体を何とか抑えながら、相手にバレない様に気持ちを押さえ込み、冷静に弁解しようとする。



 しかし、そういう態度がどうやら相手の反感を買ってしまった様だ。



「殺す」



 客は勢い良く僕の座るテーブル席を殴る。次の瞬間僕がもう一度口答えしようならば、絶対殴ってくるだろう。でも今度こそ殴られたく無い。どうすればこの状態を潜り抜けられる?



1.殴られる前に殴る。


2.無言で無視する。

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