第1話

 僕は死んだ。虐めによって骨という骨を折られに折られ、最早人間の原型が留められない程に。



 それで僕は何時も保健室ではなく、学校の呼んだ救急車に運ばれる。



 でも僕はもう慣れている。いや、一層の事殺してくれと願う程に。



 病院で折れた関節を元に戻され、骨は全治数ヶ月。これでは単位なんて取れないのは最早当たり前。



 毎度虐められ、退院しても帰路に待ち伏せられ、そしてまた病院へ。毎日のループだ。



 僕はもう生きている意味なんてあるのだろうか? 一切の自由の無い世界はもううんざりだ。早く死んで、新たな人生を始めたい。



 でも自殺は出来ない。だって、自殺の暇さえも許してくれないんだから。病室は僕の家と言っても過言では無い。



 入院している間は真面に身体も動かせないから病院で自殺も叶わない。



 誰でも良いから、早く僕を殺してくれ。



 そんな悲願は遂に今日の救急車によって叶えられた。



 精神的にしろ、肉体的にしろ、毎日の入院と退院を繰り返す僕の身体は遂に限界を超え、救急車に運ばれた瞬間、何時もの病室で僕は命を引き取った。


──────────────────


 僕は眼を覚ました。暖かい日差しを全身に浴びながら、澄んだ空気を一杯に肺に吸い込んでから、ゆっくり瞼を開く。



 誰もいない大きな木の下で僕は寝ていた。其処は恐らく天国だろう。漸く神様は僕に死ぬ事を許してくれたんだ。



 やっと地獄の様な束縛から解放された。そう、本当の自由なんだ。身体の痛みも全部消えて、嫌な記憶がだんだんと吹き飛んでいくかの様な気がした。



 もう入院する必要なんて無い、虐められる心配なんて無い。僕の行きたい場所に、僕の生きたい様に、自由で居られる。



 こんなの最高なんて言葉じゃ収まりきらない。遂に念願の夢が叶ったんだ。



 空気が美味しい、太陽の日差しと木の日陰が合わさって丁度良い。とりあえず今はぐっすりと眠りたい。



 僕は、木の下の日陰でゆっくりと瞼を閉じた。

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