第2話
木の下で瞼を閉じてから約六時間。
僕は瞼を開けると、最初に夕焼けの空が目に飛び込んで来た。どれくらいの時間を寝ていたのだろう。こんなに長く安らかに眠れたのは子供の時以来だ。
僕はその場で大きな欠伸をして背伸びをする。
暗くなる前に家に帰ろう。
そう思った瞬間、僕は再度気がつく。僕は死んだのだと。あまりにも幸せすぎて忘れていた。
更に僕はそこで新たな疑問を浮かべる。"本当に此処は天国なのだろうか?" 危険な気配も無ければ、逆に静かすぎて安全とも言い難い。
僕は何故か嫌な予感がした。考え過ぎなのかもしれないが、今の状況と僕がこんなにも自由に生きているのはあまりにも可笑しい。
天国は本当に自由なのか? 神様は僕に死ぬ事を許したかも知れない。でも、自由に生きるとは許してくれたのだろうか?
僕は急いで立ち上がる。すると……。
夕方から日が漸く沈んだ頃、突然目の前の土が真下から突き上げられる様に小さく盛り上がる。
その土の盛り上がりは、次々と僕の周囲に一つ二つ三つと、どんどん増える。
僕が驚いていると、その数は早くも数百個に登り、僕は余りにも異様な光景に腰を抜かし、尻餅を着く。
そしてその衝撃の所為か、盛り上がる土は一気に一斉に地面を突き破り、土の中から白骨体が現れた。
数百の白骨体は皆、一斉に歯軋りを周囲に響かせ、しかも全員生きていた。あり得ない。死者が蘇ったのか?
もしかして、ここの白骨体は僕と同類? 神様の許しを勘違いした人間の成れの果て?
また僕は殺されるのか? 嫌だ。二度死ぬなんて御免だ。
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その場に留まるルート追加。
『Bルート』へ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054922441816/episodes/1177354054922758260
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やっと自由になれたんだ。僕は腹の中の溢れてでんばかりの死の恐怖を思いっきり叫びと変えて吐き出した。
「うわあああああああっ!!!!」
僕は少し転げそうになりながらも、無数の白骨体の中を突進で掻き分け、兎に角走った。
いつまでも走っても聞こえる歯軋りに、頭が狂いそうになっても兎に角走り続けた。
死にたく無い、死にたく無い、死にたく無い、死にたく無い!
つい先程までとは大違い。死にたいと思って漸く死んだら、次は死にたく無いと死への恐怖を初めて覚える。
きっと神様はこれを狙っていたんだ。何もせずに、例え何も出来なくても、何もしようとせず、軽く"死にたい"とほざく愚かな人間に死の恐怖を植え付ける為に。
僕は死に物狂いで走り続けると、小さな村の様な影を見つけたので、其処にたった一つの希望を見出し、手を伸ばしながら走った。
しかし、僕にそんな体力は無い事に気が付く。息を激しく荒げ、心臓は聴いた事が無い程に鼓動を早め、意識が朦朧とする中、村の手前で人らしき人影が見えた直後、僕の視界は暗転した。
またその直前、ほんの一秒にも満たない一瞬だけ目を疑う物が見えた気がした。
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