第2話
「賭けは俺の勝ちだな!」
「さすがにゴブリンには殺されなかったか」
ギルドの連中はセイシが生きて帰ってこれるか賭け事にしてた
これは仕来りみたいなものでレベルが低い駆け出しの冒険家を
なじるのが風物となっているがセイシの場合は五年以上も続いている
「よぉセイシ今日はどれくらい稼いだんだ?
俺なんて遠出で今さっき帰ってきたばかりでよ
オークを狩って来たんだ」
「500万Gも大金が入ったんだぜ」
自慢気に話掛けてきた男はマイケル
ギルド内でセイシをイジメる主犯格的な人物だ
セイシと同期で一緒に仲間として戦ったことがあるが
レベルが1のままのセイシはあっさりと捨てられ
その後も何かと突っかかるようになる
「マイケル・・・・」
「五年間もドンケツのブロンズバッチは
どれくらい稼いだのかな?ん?」
「まだ受付に行ってないから
貰ってないよ」
「おっとそれは邪魔したな、代わりに俺が貰って言ってやる
依頼書よこしな」
「あっ!」
「ねーちゃんこの依頼の報酬たのむぜ」
「はい、お待ちください」
「報酬は800Gです、間違いがないか証明書をご確認ください」
「ぷっ」
「ぶひゃひゃひゃひゃ!!」
男が笑いだすと他のギルド仲間も笑い出した
「そりゃねーだろ」
「一日働いて800Gだなんて」
「よくそんなんで生きてられるな!」
「ひっひっ笑わせてもらったぜ
ほらよ大事な大事な日給だぜ」
「もー可哀想でしょ
ごめんね、セイシ君
マイケルが意地悪な事して」
「イザベラさん
何時もの事ですから気にしてないです」
「本当にごめんね後で叱るからね」
イザベラはマイケルと付き合ってる彼女だ
セイシは自分の事を裏で陰口をたたいてるのを知ってる
仲間のときも庇ったふりをしてるが
マイケルにセイシをパーティーから外すようにせがんでいたのだ
「セイシ君、今日はやらなくてもいいの?」
「何をですか?」
「とぼけないでよ、ステータスがどれくらいなのか魔機具で見てるじゃない」
「今はそんな気分じゃ」
この状況でステータスを調べてレベルが上がってなかったら何時もの様に笑われるだけ、そんな屈辱をわざわざ味わいたくない
イザベラは顔をしかめ疎ましい表情に変わる
「はぁ?なにそれつまんな」
彼女はセイシが苦しむ姿を見たいのだ、それが可笑しく気分が高揚とするのだ
「私が連れて行ってあげるわ」
「なっなにを!?」
セイシのレベルでは彼女の力に抗えず振りほどくこともでいないまま
機具の所に連れていかれてしまう
「僕はやりたくないって言ってるんだ!」
「なに言ってるのよ、早くここに手を置きなさいってばっ」
「やっやめろ・・・!」
手を取られ装置の台座に無理矢理引っ張られる
「手かしてやろうか?」
ニヤニヤしながらマイケルが
イザベラに手を貸しセイシの手を台座に乗せる
「ぐっっ!やめてくれ!」
「よし、いまだ」
「ステータスオープン!」
台座からホログラムが映りだし
セイシのステータスが浮かび上がる
その光にギルドに居た皆の視線がそそがれる
________________________________________
登録者名 セイシ
ランク ブロンズ
生命力--------------------38
魔力------------------------0
攻撃力---------------------8
防御力---------------------5
器用さ---------------------7
Lv---------------------------1
経験値-----------------32506
___________________________________________
「ぶはははははははは!」
「きゃはははははははは!」
ギルド中が爆笑の嵐
おなかを抑えて笑い咽びく者、転げ込む人も居た
レベル1の冒険家は笑いの種として格好の餌となる
「プークスクス、ごっごめんねセイシ君
まだレベル1だったんだね」
「おいおい、もう五年目だろセイシ
いつまでレベル1のままなんだよ」
「俺なんて28になったんだぜ」
「だめよ~もう、セイシ君はレベル1が限界値なんだから
嫌味になっちゃうでしょ」
「あっそうだった、ごめんなセイシ悪気はなかったんだ」
「おまえの限界値はレベル1だったんだな」
「ギャハハハ!」
二人の執拗な弄りに対して誰も止めるものはいない
それも当然である冒険者ギルドでは人を蹴落とすのは当たり前
嫉妬や憎しみの弱肉強食の世界なのだ、弱い人間が居ていい場所ではない
ギルドを抜け出せば済む事だし自分で解決しないのだから自業自得
誰も助けてはくれない
「くっ・・・うっ・・・」
「え?もしかしてセイシ君泣いてるの?」
冒険家として誇りに思ってるし真剣に取り組、努力していた
それが実らず剰え笑われてしまう事に感情が高ぶり、
情けなく涙が出てくる
「いやぁね~泣くなんて冷めちゃうは
気持ち悪い」
「おいおい大の男が泣くなよ、ぷっ」
「そうだ!お前だけしか出来ない仕事があるんだった」
「何言ってるのマイケル?レベル1が請け負う仕事なんて
あるわけないでしょ」
「それがあるんだよ一千年前の依頼だそれも国家規模な」
「兄ちゃんそれは止した方が良い」
割って入ってきた大きな男が
マイケルの提案を抑制しに来た
「なんだいローガンさん、セイシの子守りにしにきたのか?」
「関係ない、その依頼の事でだ
魔人が封印されてる所に行かせるわけにはいかない」
「おいおい、俺はまだ内容を言ってないぜ
行くどうか決めるのはセイシが決めればいい」
「ローガンさん今、魔人って言いましたか?」
セイシが寡黙なローガンに話しかける
魔人、それはセイシにとって重たい言葉なのだ
「ん?ああ・・・とある遺跡に一千年前世界中を苦しめた魔人が封印されてるのだ
その封印を解くにはレベル1の者でしか開けられない仕組みになっている」
「なんでレベル1なんですか?」
「わからん、だがその依頼書によればレベル1の強きものでしか
倒せない魔人の様だ
もしかしたらレベルが強い程デバフになってるのかもしれん」
「だが我々は大人になるにつれて必然とレベル10以上にはなる
つまり誰一人としてその遺跡に入る事も封印を解く事も出来ないと言うことだ
お前以外にはな・・・・」
「大げさな単なるおとぎ話、誰かが創作した依頼書さ
受付ねーちゃん、その封印が解けるカギあるのか?」
「あっはい、少々お持ちください」
「あるのかよ」
「小僧行く気なのか?」
「・・・魔人が本当なら行く必要があります」
「その封印を解いたら世界が滅ぶとしてもか?」
「え・・・それは・・・」
ローガンから予想外の言葉に戸惑うセイシ、
世界規模の厄災なんて想像すらしていなかった
「おいおい脅すなよ、セイシ君がやる気出してるのに
大げさなんだよ」
「わしは本当の事しか言わん」
「お待たせしました、これが封印のカギとなっております」
渡されたカギは丸い形をしていた
どこかにはめ込むのだろうか?
「あのセイシさんこの依頼は国に報告義務があるので
国の返事が来るまで待機していただきますか?」
「ギャハハハ傑作、国に報告義務だ?偽装もいい所だ
国家レベルの依頼ならホワイトバッチが必要なんだぜ」
「ですが当時はそのような仕組みもないので・・・・」
「そうさ、だから待つ必要はない
一千年前の国は滅んで今この地は別の国に様変わりしたんだからな」
「そうだろセイシ?」
「え・・・ああ・・・」
「本人もこう言ってるんだ今すぐにいかせてやれよ」
「やめろ死ぬことになるぞ、セイシだけじゃなくここにいる皆も国もだ」
「すみませんローガンさん、僕しかできない事ならこの封印されてる
魔人を倒してきます」
「よく言ったセイシ!」
「みんな!聞いてただろ!セイシが死ぬかどうか賭けようぜ!」
「よっしゃ!待ってたぜ!」
「俺は死ぬ方にかけるぜ!」
「俺もだ!」
みんな待ってましたと言わんばかりに大騒ぎになる
誰しもがセイシが死ぬ方に賭け始める
それもそのはず、おとぎ話だろうと最上級の依頼には変わりはない
十年に一度あるかないかの話
それをレベル1のセイシが請け負うと言うのだ
死ぬ方に賭けるのは必然・・・だがローガンは違った
「小僧生きて帰って来いよ」
「はっはい!行ってきます!」
ローガンとは今まで話したことがない
冒険家になって初めて言われた
思ってもみなかった
相手を気遣う労りの言葉に嬉しく思うセイシ
「みんなの期待を裏切らないとな」
サキュパスとレベル1の僕 ねんきん @kemusi-no-bansankai
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