第8話:復讐2

 私の目の前には、信じられないほど多くの王侯貴族がいます。

 たくさん集まるとは思っていましたが、これほどとは思いませんでした。

 参加を望む王侯貴族があまりに多過ぎて、急遽城の外に多くの屋敷を建設して、宿泊場所を確保しなければいけないくらいでした。

 家臣領民想いのピエールが、彼らの家を開放させるのを嫌がったのも理由ですが。


「まあ、そうですの、公爵夫人。

 わたくしなどは旅の踊子に過ぎませんでしたから、貴族の常識を何も知らないのです、よろしくご指導願います」


 今回新たに側室として披露されたネヴィアが、物怖じすることなく王侯貴族と渡り合っています。

 お陰で私への負担が減りました。

 こうして余裕をもってピエールと踊れるのも、面倒な事を、特に性格の悪い貴族夫人貴族令嬢のあしらいを、ネヴィアがやってくれているからです。

 今もネヴィアと初めて会った時の事が鮮明に思い出されます。


「初めまして、私がピエールの愛人をさせてもらっているネヴィアよ。

 貴女がピエールの正室オラーナ様ね、聞いていた通り綺麗なお嬢さんね。

 私はこの通り学のない身体だけが取り柄の馬鹿だから、直ぐに飽きられるわ。

 だから歳をとってピエールの興味が若い女に移るまでは我慢してね」


 私はネヴィアのあけすけな言葉に衝撃を受けました。

 でも、確かに、その通りかもしれません。

 暇と寂しさを紛らわすために、愛人候補を選んでいた時に知ったのです。

 男は常に若くて美しい女を求めるのだと。

 オラーナは旅の踊子をしていたそうですから、その事は身をもって知っているのでしょうね。


「オラーナ嬢の事は色々耳にしているけど、王家と実家に復讐しないの?

 私なら絶対に泣き寝入りせずに、ピエールに頼んで、ビスコー王家とオレゴン公爵家を攻め滅ばしてもらうか、乗っ取ってもらうわよ。

 まあ、そこまではやらなくても、オラーナ嬢は王女様なんでしょ?

 ピエールとの間に生まれた子に、王位を継がせても何の問題もないんじゃない?」


 今思い出しても大笑いしてしまいますが、聞いた時にも大笑いしてしまいました。

 確かにネヴィアの言う通りで、私が復讐する相手はピエールではなく、国王と王妃と両親です。

 そう思ったとたん、眼の前の風景は全く変わりました。

 胸に、いえ、心にあった重いモノが、きれいさっぱりなくなりました。

 私はネヴィアが大好きになってしまいました。

 ピエールの心を掴んでいる憎い相手ではありますが、同時に心を許せる人でもあります。


 忠誠無比のピエールに、王家を滅ぼせとは言えません。

 私からビスコー王家王位を要求します。

 その為には何としても男の子を生まなければいけません!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

政略結婚のルールくらい守って下さい 克全 @dokatu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ