第7話:復讐1

「旦那様、私は旦那様を愛しております。

 本当に愛する人は旦那様だと確信できました。

 だから本当の妻にしてください、してくださるのですよね?!」


 私の告白を聞いたピエール、いえ、旦那様は苦渋に満ちた表情をされています。

 政宮に集まった家臣が驚きの表情を浮かべていますから、旦那様がこのような表情を家臣の前でされる事はないのでしょう。

 私の告白は、それくらい旦那様を悩ませ苦しめています。

 心から申し訳ないと思いますが、私も必死なのです。

 この恋心を抑えることなどできないのです。


「オラーナ姫、私には心から愛する女性がいるのだよ。

 オラーナ姫と結婚しても、それは政略結婚でしかないのだ。

 私は幼い頃から知っているオラーナ姫には、幸せになって欲しいのだよ。

 私は、愛する女性、ネヴィアと出会って、初めて本当の幸せを知った。

 オラーナ姫にも、そのような幸せを手に入れて欲しいのだよ」


 旦那様の告白に、愛されていないという事実に、胸がキリキリと痛みましたが、それでも私の旦那様への想いは揺るぎませんでした。

 同情し、哀れに思い、幸せにしてやろうと思っていた子供が、自分の事を愛していると告白し、ちゃんと妻にしろと迫ってくる。

 家臣に、私に愛する者ができたら離婚してやるとまで公言していた手前、他にどれほど愛する者がいようとも、私を正式な妻にしなければいけない。

 これは私から旦那様への復讐になるのでしょうか?


「私の愛する男性は旦那様だけです。

 旦那様以上の男性なんて、この世界のどこを探してもいません。

 形だけの白の結婚とはいえ、旦那様の妻となった私が、他の男を愛せる訳がありません!」


 私の告白を聞いて、表の家臣も奥の侍女も、心から賛同してくれています。

 後宮に勤める侍女達だって、旦那様の目に留まる幸運を夢見た事があるはずです。

 男達だって、もし旦那様に衆道に相手を望まれたら、喜んで応じるでしょう。

 それでも普段彼らが冷静でいられるのは、旦那様が絶対に届かない高嶺の花だと分かっているからです。

 ですが、私は、形だけとはいえ、正式な妻、それも正室なのです。

 旦那様に恋焦がれ、愛さずにはいられません。


「分かった、オラーナ姫を正式な妻としよう。

 だが、今まで以上に辛くなるかもしれないぞ。

 私の心の中にはネヴィアしかいない。

 オラーナ姫の事は可哀想な妹のようにしか思えない。

 そんな男に抱かれるのは、とても辛い事だとおもうぞ。

 その覚悟はできているのかい?」


 そんな覚悟はとうにできていますよ、旦那様。

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