後書きと補足と参考文献(改め)

(第1部の後書き) 


 最後までお読みいただきありがとうございました。


 本作は岩手県並びに宮城県、福島県等に様々な形で広く伝わる「皆鶴姫伝説」のうち、岩手県一関市に伝わるものを参考としました。

 岩手県一関市室根町の国道284号沿い、「高沢」のバス停のすぐそばに皆鶴姫神社の参道入口の標柱が立てられています(※参道から先は私有地とのことですのでご注意ください)。

 伝説上、この室根町高沢付近で皆鶴姫は道半ばで力尽き自害したとされています(丁度冒頭で泰衡達と出会った辺りです)。

 その最後を憐れんだ地元の人々が祀ったといわれているのがこの皆鶴姫神社だそうです。

 もし、皆鶴姫が途中で諦めることなく平泉の義経の元に辿り着いていたなら、どんな歴史的なドラマが生まれていたか。

 というのが本作の趣向であります。

 なによりも、知人からこの伝説を紹介された際に、この悲運の女性主人公をせめて香竹の小説の中で終着の地まで辿り着かせてあげることができたら、と思ったのが初めての歴史小説執筆の動機でもありました。


 なお、作中における月日は基本的に旧暦で表記しておりますが(香竹が資料を読み違えているものがあるかもしれませんが)、「閏4月30日(今の暦だと6月半ば過ぎくらいか?)に紫陽花の花が咲いていて~」では何だか書いていてしっくりこなかったので、作中での季節描写は新暦に沿って書いておりますことを申し添えさせていただきます。

 泰衡の兄弟については、末弟に関する資料が文献により諸説分かれておりましたので(名前もまちまち)、各資料を吟味の上「通衡」として描きました。


 また、現在本作の後日譚のような内容の続編を執筆しておりますので、もし本作を気に入って頂けましたら、他日投稿させて頂いた際には目を留めて頂ければ幸いに存じます(第2部としてこのページに継続し掲載させていただく予定です)。



(↓ここからが第2部の後書き)


 本当の最後までお読みいただきありがとうございました。これにて「彼方へ」全2部完結と相成りました。

 第2部の主人公、藤原高衡は作中で書いた通り泰衡兄弟の中で唯一一族滅亡後も生き残り10年以上も鎌倉幕府客将として生き続けた人物です。史実でも最後は鎌倉幕府打倒を図る反乱に加わることになるのですが、調べているうちに、果たして彼は最後まで一族を滅ぼされた怨恨が理由で鎌倉との戦いに挑んだのだろうか、という疑問を抱くようになりました(何故奥州合戦で玉砕することなく生きる道を選んだのか、何故大河兼任の乱に加わって本懐を遂げなかったのか、何故十数年も宿敵の元に仕えていながらこの時になって反旗を翻したのか。何か憎しみを越えた深い理由があるのではないか)。新たな戦乱に身を投じた彼は何を思い刀を振るったのか、というテーマを以て、第1部と絡め執筆を試みた次第です。

 あくまで高衡を中心に物語を進めているため、無理矢理遠くにいる人を引っ張ってきたり悪役を被らせてしまった偉人の方々も何人か登場します。歴史に詳しい方が読んだら「なんでこんなところにこんな大人物が出てくるの⁉」という場面も所々あると思いますが歴史に疎い香竹の不勉強と笑って許していただければ幸いです。また、一部漢文の引用に付した訳文については、やっと地元の図書館で見つけた資料が全部漢文だったため、香竹が覚束ない書き下しを加えたものなのでもし間違ってたらすみません(十数年振りに漢文に目を通してみたら全然読めなくなっていて愕然としました)。

 初めて書いた歴史小説につき、匙加減がいまいちわからず試行錯誤の暗中模索でしたが、第2部連載の間に頂いた応援やコメントが支えとなり、ほぼ毎日更新の上完結を迎えることが出来ました。この場を借りて御礼申し上げます(このまま勢いで前九年合戦編、後三年合戦編、1部2部を跨いで承久の乱編の全5部構成とした上で、更に現代編では過去の登場人物を前世に持つ主人公達が秘められし剣技を武器に冒険を繰り広げる「東京魔人學園剣風帖」ばりのジュヴナイル伝奇小説を展開しようかと一瞬構想が過り一瞬で引っ込めました。あんまり調子に乗っちゃいけない)。


 次回作ではあまり人の死なない小説を書きたい所存です。


 ありがとうございました。


 香竹薬孝


 奇しくも敬愛してやまない三島由紀夫先生の「憂国忌」に本作を完結できたことに感謝します。

 



※本作執筆にあたり以下の文献等を参考とさせて頂きました。この場を借りて御礼申し上げます(敬称を略しておりますこと何卒御容赦ください)。


「室根の伝説」 室根村教育委員会

「平泉 奥州藤原四代」 高橋富雄  教育社

「奥州藤原氏 その光と影」 高橋富雄 吉川弘文館

「義経周辺系図解説 義経北紀行伝説を読み解く」山崎純醒 批評社

「図説平泉 浄土をもとめたみちのくの都」 大矢邦宜 河出書房新社

「週刊義経伝説紀行 一号・二九号」 日経BP社

「街道の日本史七 平泉と奥州道中」 大石直正・難波信雄編 吉川弘文館

「奥州街道歴史探訪・全宿場ガイド」 無明舎出版

「奥州藤原氏の興亡 なぜ栄え、そしてなぜ滅んだのか」 風巻絃一 三笠書房

「炎立つ 五」 高橋克彦 講談社

「漫画 後三年合戦物語」 胡原おみ 株式会社オアシス


「国史大系 吾妻鏡」 吉川弘文館

「平家後抄」上・下 角田文衛 朝日選書

「平泉落日」 小野寺公二 光文社

「東方に在り」第2号  平泉文化会議所

「女武将 板額」 島政大 アメージング出版


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彼方へ -皆鶴姫伝説異聞- 香竹薬孝 @me13064441q

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