第14話

夜の森を2人で歩く、木のあちこちに吊るされたランプの光を頼りに川を目指す。


動物の気配も虫の羽音も聞こえない静かな夜に2人きり、


早苗は横目にザシキワラシを見た、

ずっと覗き窓越しに見てい姿とは違う不思議な感覚、

背は早苗夜少し高くて、体は細身ではあるが何処かガッシリしていて、握られた手は雪のように白い手は大きくて、暖かかった。


早苗はこの時初めてザシキワラシが男の子である事を悟った。


川に着くと、2人は遊ぶでも無く、ただ隣り合って川沿いに座った。

冷たい川の水が2人の足を撫でる。


「ねえザシキワラシ、今日の私なんだか変みたい、一緒に行きたい場所や、お喋りしたい事だって山ほどあったはずなのに、何にも出て来ない」


ザシキワラシは首肢を傾げる。


「何でもない、ほら空を見て天の川よ、、クチュンッ」


早苗がくしゃみをすると、ザシキワラシは持っていたストールを2人包み込む用に肩にかけた。


「ストールなんて持ってたの?ああ、姉ノさんが持たせてくれたのね」


ザシキワラシはふと早苗の手の平に人差し指で文字を書き始める。


{離れても、一緒に、暮らす、して欲しい}

{好きなままで、いてくれる?}


「勿論!ずっと一緒よ」


早苗が返答した次の瞬間、ザシキワラシは腕を掴み早苗を引き寄せ、そのまま額にキスをした。


突然の事に目を丸くする。そして気がついた。

ザシキワラシが自分に抱いている「大好き」の意味に、そして今この瞬間、婚約?をしてしまったのだと。


キスの間は3秒程、その短くも長い時間の中に早苗の脳裏に色々な考えが頭を巡った。


楽観的に返答してしまったことに対する後悔、と其れで良いのだろうかと言う迷い。

そして何より、本当に自分でいいのだろうか

と、

だけどそんな考えは、ザシキワラシの笑顔を見たら何処かへ消えてしまった。


恥ずかし気で愛らしい満面の笑顔、早苗の顔も自然と紅く染まる。


暫くして朝日が登り始める。

終わりと始まりの朝、これから2人は同じゴールを目指して別々の道へと走り始めるのだ。


「もう朝ね。早く帰らないと」

「うん、、」


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囚われの座敷童 @suupalsannkaidatemannsixyonn

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