第13話
サクラソウ畑の瓦礫の中からお婆ちゃんが這い出てきた。
見上げると目の前にはザシキワラシが。
お婆ちゃんは何かを察したのか、その場に座り込み言った。
「そうかい外に出られたんだね。早苗ちゃんか?あの子は本当に自我が強くて感情に流されやすくて・・強い子だ」
「あー?」
「私は目の前の裕福な暮らしに目が眩んで、アンタとの約束を破ったあげく罵倒して傷付けて…今更謝ったって意味はなかろう、アンタは私を呪いにきたんだろ?そうしてくれ、この愚かな老ぼれには相応しい末路だ」
お婆ちゃんはその場で頭を下げた。
ザシキワラシはそっと頭を撫でた。
驚き顔を上げるとその顔には笑顔が浮かんでいた。
「ヨミ…」
お婆ちゃんの名前は代美子、ヨミと言うのはお婆ちゃんとザシキワラシが遊んでいた当時のあだ名だ。
ザシキワラシの瞳には恨みなど微塵も無かった、そこに映って居るのはかつての友達。
「アンタ・・許すってのかい?如何て!?」
「友ーだあーち」
その言葉にお婆ちゃん泣きくづれ、何度も何度も謝った。
暫くして、早苗、両親、裕也、そして姉ノ座敷童が集まった。
「お婆ちゃん、怪我はない?」
「ああ大丈夫」
「良かった、あーでも旅館無くなっちゃったわね」
「何も気に病みこっちゃないよ、この惨状はなるべくしてなったんだから、寧ろこの程度で済んで良かったほうさ、この落とし前は私が全て受け持つ、後も事は他で決めてくれればいい、勿論座敷童のことも」
「お婆ちゃん有り難う、ねえねえ、其れならザシキワラシ!町で暮らしましょう、そしたらいつでも会えるわ」
ザシキワラシは何故か悲しげな表情を浮かべる。
姉ノ座敷童が間に割って入る。
「早苗さん、残念ですが其れはできません。この子は束縛されていた期間が長すぎた。
この子の心はとても不安定で未熟、そんな状態ではまた人を傷つけかねない、其れは早苗さんも例外ではありません、なので治療が必要なのです」
「其れじゃあしばらく会えないって事?治療はどのくらいかかるの?」
「そうですね、正確にはわかりませんが長く見積もって10年はかかるでしょう」
「そんなやっと外に出られたのに…」
その時、ザシキワラシが手を伸ばした。
「なえー約束」
そうだ、ザシキワラシと約束していたのだった。
川や森を散歩して回って美味しいお菓子を食べる。
2人は手を取り合い、散歩に出かけた。
両親には座敷童の姿は見えていなかったが、目の前のサクラソウ畑やお婆ちゃんの様子を見て深くは追求する事はせず「日の出までには帰って来るんだよ」と一言だけ告げ手を振り見送った。
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