寄る辺なきもの同士の長い道行き
- ★★★ Excellent!!!
不死者の王と呼ばれる麗しの乙女・ココと、彼女に拾われた天涯孤独の少年・ダニエルの、長い旅路とその行く末のお話。
ファンタジーです。どこか童話やお伽話を思わせる、寂しくも優しい雰囲気の物語。大筋としては王道、というか物語としてのカタルシスや満足感のようなものをしっかり与えてくれるお話で、紹介文の通り「めでたしめでたし」で終わってくれるところが魅力的でした。いや正確にはまったく手放しで「めでたし」と言えるかどうかは難しいのですけれど、でもそこに〝だからこそ〟と言えるのが、このお話のいいところ。というか、一番好きなところです(後述します)。
物語全体から醸される、どこかうら寂しいような雰囲気が好きです。主人公らの抱えたある種壮絶な背景、例えば主人公が天涯孤独の身であること、というか家族を処刑されていること(しかもその場面から物語が始まっている)。また事実上の保護者となったココの、その背負った運命の重さなどなど。
濃厚な死の匂いと、死ねないものの持つ悲哀。でも暗く寂しい物語だからこそ、寄り添う彼女の手のひらの温かみがよりはっきりと伝わる。というか、もう言葉を飾らず個人的な欲望に素直な感想を述べるのであれば、とても素敵な〝おねショタ〟だと思いました。好きなんですこういうの。その後の展開、というか設定上の必然、この旅がいつまでも続くわけではないというその予感も含めて。
この先はネタバレを含みますのでご注意ください。
不死者の王としての特性として、ずっと老いることもなく死ぬこともないココ。彼女と旅路を共にした『ダニエル』たちは、でも必然的にいつかは彼女を置き去りにすることになる。その種族差に起因するすれ違い、生きる時間の違いによる別離がとても沁みる——というか、この構成だからこそなお効きました。
主人公の「いつか大きくなって彼女を守る」という夢が、でも「いずれ先立つことになり彼女をひとりにしてしまう」という現実と重ね合わせになっていること。あるいは逆転というか、望んでいたはずのものが実は一番望まない道だったという、この残酷さが非常に印象深く、そしてなによりというかなんというか、その上で迎えたこの物語の結末がもう。
素敵でした。無事に間に合い、彼女に手が届くというハッピーエンド。実のところこの終幕、ただ幸せなばかりでは決してないというか、起こった事象を客観的に見るのであれば、より険しく悲壮な道へと我が身をなげうっているとも言えるんです。壮絶な覚悟がなけれはなしえなかったその行為を、でも決して「悲壮な自己犠牲」などとは思わせず、しっかり「幸せなゴール」として読ませてくれる。この説得力、優しく納得させてくれる物語の力のようなものが、なにより嬉しいお話でした。