第2話 初ログインと初戦闘

 気がつくとポツリと何も無い虚空に浮かんでいた。いや目の前にはキーボードとアバター名を打ち込んで下さいとある。

「捻りないけどセージで」

 なんかカタカナでこう呼ぶと西洋人ぽく聞こえるから不思議である。お陰でほぼ全てのゲームで使用しているが。特に意識もせずに打ち込めるほどだ。

「エンターと。次はアバターか」

 ヒョイと俺自身を写した鏡が出てきて無数のウィンドが縮小されている。試しに髪をタップすると色や質感更には長さまで弄れるので驚いた。

「白髪で良いか」

 その他項目はそんなに弄らない。ただ見た限りでは本当に何にでもなれそうな感じがしたくらいだ。それこそ性転換や動物になることも。まさに“FREE”だ。…そんなに現実の肉体と乖離させるとなんか支障が怖いので辞めておく。

「んとコレで終わりか」

 アバター製作完了を押すとPVが流れ始める。よくある設定のお話である。


 ちなみに要約するとかつて滅んだ世界で人類は再び文明を取り戻しつつあった。ただしその滅んだ原因とさせる存在を確認した神々が使い(プレイヤー)を召喚した。君らは無数に育つ可能性を秘めている。さあ世界を救い文明を取り戻して征け!

 的な感じである。


 そしてだんだんと周囲が色付いていくと大噴水の前に居た。大噴水の中には巨大な水晶が浮かんでいる。どうやらここがセーブポイントらしく死んだ際には此処に戻されるらしくまた再ログイン地点の1つでもあるらしい。そしてプレイヤーの初期スポーン地点なのでどんどんと人が雪崩れ込んでくる。流石に邪魔になりそうだな。


 特に何もすることなく道を進み門を出ると少し平原があり割と直ぐに木々が生えており草木が生茂っている。踏んでいる草の匂いや感覚はどれも現実のものと相違ない。本当に異世界に来たみたいだ。

 まあ運営が異なる世界を提示するや無数の可能性を謳っているからこの程度は序の口なのだろう。そう思いつつも小石を拾ってはポケットに入れる。

 そうして森の中を歩いていると緑色の肌をした70cmくらいの小人が現れた。その顔は獣猥で腰巻と棍棒を装備している。

「ゴブリンかね。まあソイ」

 目を目掛けて投擲した石は確実にその目を傷つける。そしてその痛み抑えようとして両手で目を抑える。すると当然、棍棒は落ちる。その棍棒を拾い上げると剥き出しの首を上から叩き潰す。グシャリと肉を叩き潰すような妙な感覚と共にゴブリンが光の粒子となって消える。

「じゃあ次か…って」

 真っ直ぐに跳んで来たソレを紙一重で躱す。いきなりの事で多少は蹌踉めくも直ぐに立て直して棍棒を構える。ソイツは真っ白な毛皮に真紅の瞳を持ち額に一本の角を生やしている。

「ホーンラビットか?」

 その呟きと共に再び突進してきたので今度は棍棒を盾のように構えて弾き返す。思ってたよりも衝撃が強くて若干腕が痺れる。が向こうも同等の衝撃が有ったらしく頭をクラクラさせている。

「なんか申し訳ない気がしなくもないが…」

 脳天にそのまま棍棒を振り落とすとまた光の粒子となって消える。大分慣れて来た気がするけど…このまま狩りを続けるか。



 しばらく進みながら狩りをしているとゴブリンかホーンラビットしか遭遇しない。個人的には鳥の1匹や2匹くらい居るものだと思っていたのだがそうでもないらしい。対空戦を早めに経験しておきたかったのだが仕方ない。

「そう言えばドロップアイテムとかどうなってんだろ?」

 スキルに解体でもあるのでは?とは思っていたがそうでも無い見たいだが。まあ確認したい事は後少しで終わりそうだから良いけどさ。それが終わったらアイツに聞くか。

「っとアレは剣士タイプか?」

 石でできた刃毀れした剣を持つゴブリンが少し遠くに見える。大体75mほどか。十分に範囲内だ。既に石同士を打ちつけ合う事で鋭くした石を遠投すると石は放物線を描き右眼に刺さる。ちとズレたか。それによりのたうち回り辺り一面適当に石の剣を振り回している。実に見事な隙である。

「これなら使う必要なしだな」

 音を大きくたてながらも走り存在感を露わにする。既にアイツの間合いは掴んだから後はミスをしないだけ。そして互いの間合いまだほんの数歩で足を止めるとまるで狙い澄ましたかのように剣を振り下ろされるのに合わせて右手首を叩く。それにより少し剣を握る力を弱めた瞬間に体当たりで体勢を崩し剣を奪う。

「……重いなコレ」

 見た目よりもズッシリとした感覚に思わず呟く。ただやはり刃毀れしておりそこまだ耐久性というか切る機能があるとは思えない。ただ作りとしてはしっかりしており砥げば切れ味を取り戻すであろう。

「今は考えても仕方ないけどな」

 ただそのままストンと比較的マシな鍔元で首を落とす。そして絶命したせいか心なしに転がった際に見える目が白目向いているのが絶妙にホラーである。ただ数秒の後に光の粒子になるので問題ないが。

「コイツがデュラハンで無くて助かったような残念なような……」

 なんとなく某異世界ファンタジーを思い出して微笑を浮かべてしまった。



 この後も数体同じような事をして倒していると不意に開けた場所に出た。気がつくとまるでコロッセオみたいな空間になっており逃げようもない場所になっていた。どうなってんだ?


 そして不意打ちのように鋭く雄々しい咆哮が放たれる。それにより周囲の草花や枝葉は大きく揺さぶられる。また若干の小石などが襲いかかってきたので石の剣で最小限に払うとソイツの姿露わになる。

 優に2mを越しレスラーと見間違うほどのずっしりとしや体格。妙に赤黒く染まった爪先に胸元にあるX字の傷。そして全身を覆う鎧の如き茶色の毛皮。そうして獰猛な目つきをした風貌。

「クマか?」

 そしてその巨体からは考えも付かないような速さで迫って来た。

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FREE GROW ONLINE 髙﨑 レイ @reitakazaki

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