面白い問いかけから始まっていく、ヒーローの裏舞台での主人公の葛藤とは?

【物語は】
面白い問いかけから始まっていく。これは誰もが一度は、抱いたことのある疑問だろう。ヒーローの変身中に何故、敵は攻撃してこないのか。
その答えは確かに、直ぐに分かるのだが、解釈が非常に面白い。
「攻撃はしてくる? してこない?」
あなたは、一体どちらだと思いますか?
予想を立ててから読んでみてくださいね。
恐らく、想定外の結果にはなりますが。

【世界観・舞台の魅力】
まず、目の付け所が面白い物語である。そして、そこから新たな展開を産んでおり、予想外のストーリーとなっている。
昨今では、走りながら変身していくしていくようなものもあるが、それはロボット系であり、ヒーロー、ヒロインものは変身シーンが大きな見せ場となっていることの方が多い。この物語では、そのような変身シーンに着目し、描かれたものである。そして変身シーンに対してヒューマンドラマを描くというのは、珍しいのではないかと感じた。

あらすじにもある通り主人公は、ヒーローの変身シーンの時、無防備な状態の彼らを敵から守るのが仕事である。どうやって守っているかは、作中で明かされていく。その中で、守る側である主人公の葛藤部分が丁寧に描かれており、裏方ならではの気持ちが伝わってくる。

もし自分の方がヒーローより強いのに、目立たなかったなら?
その活躍が無かったことになったなら?
強さだけではなく承認欲求やプライドなども、モチーフにした物語なのではないかと感じた。どんなに完璧にこなし、相手よりも能力を持っていたとしても、誰にもそれを認めて貰えない。裏方でいなければならない主人公は、かなり精神的に辛い立場だと感じる。
根っからの裏方好きでもなければ、耐えられないのでないだろうか?

【物語・登場人物の魅力】
主人公はきちんと自分のやるべきことをこなしているようには感じるが、”やはり納得いかない”と思う面が垣間見える。
ヒーローの変身する間、敵から彼女を守り切った主人公であったが、その帰りにたまたま異世界から来た「ヴィラン」と出くわす。本来なら、ヒーローがとどめを刺すのだが、一人で戦ってしまう。彼の強さを認識する場面だ。

ここで思うのは、これだけ強くてもヒーローにはなれないという事。一緒にいた幼馴染みのスナイパーの心の声”そもそもヒーローを守る存在がヒーローより弱くちゃ(略)”(引用)により理由などを妙に納得してしまう。
ここでヒーローよりも強い護衛がいるのならば、”ヒーローは要らないのではないか?”という疑問が湧く。このことについては、きちんと理由が述べられている。(作中にて)

ヒーローよりも強いのにヒーローになれない主人公の心境に、共感の持てる作品である。色んな理由があり、それ自体(システムなど)は理解出来るが
、別な部分に納得いかないという複雑な心境になる物語なのだ。
とても面白い(興味深い)物語である。

【物語の見どころ】
裏方にスポットを充て、葛藤を描くというのがとても面白い。アイドルにしても、裏方がいてこそのアイドルなのだ。ただそこにいるだけ(存在しているだけ)では、ただの人でしかない。ヒーローもしかり。
支えてくれる人物、お膳立てしてくれる人がいて、初めてヒーローと認められる。つまり、主人公がどんなに強くてもヒーローになれないのは、それが理由なのかもしれない。

しかし、この物語はそこでは終わらない。
主人公は、一度は「護利隊」から追放されてしまうがその後、彼は今までヒーローが手に入れることの出来なかった能力を手にするのである。
それこそが、彼のターニングポイントなのではないだろうか?
ヒーローという肩書にこだわることを辞めた時、彼が本当に進みたかった道が見えてくるのではないだろうかと感じた。

あなたもお手に取られてみませんか?
ヒーローの舞台裏で戦う主人公の物語。ヒーローより強い彼の戦う姿(拘りの戦闘シーン)は、ヒーローと「ヴィラン」の戦いよりも夢中にさせてくれます。この先の彼の活躍を、その目で是非、確かめてみてくださいね。
お奨めです。