第5話 真実の恋
遠山恵子は秋葉に次の日曜日、家に行って本を借りたいと連絡を入れた。部屋に入れてもらい、出来るだけ長く話をしたり、本を読んだり感想話したりするつもりだ。先日の試験の結果は頑張ったので前よりも良かった、自分へのご褒美だ。でもこれくらいが限度でもある。
サンドイッチでも作って行き、多少は女子力もアピールしたい。そして、次は自分の家に来てもらうのだ。
ドキドキする。うまく話を進められるかなぁ。
「いいよ、何時に?」返事が来た。よし!決戦は日曜日だ!ほっぺを軽く叩いて、カツを入れる。
秋葉は先日のハンバーガーショップから、遠山が気になっていた。中学の頃よりキレイになってたし、秋葉といる事を喜んでいるのが感じられた。鈍感な秋葉でも、もしかしたらって思えた。
頭の良い遠山は秋葉の好きな内容の話題を掘り下げてくる。話は楽しかった。懐かしい話題や今の高校の事。
遠山と別れた秋葉は家に帰る途中、コンビニに寄った。買い物をして店を出で、二人連れの人影を見た。女は山口さんだった。無意識に隠れる。優しげな目をした背の高い大学生っぽい男だ。楽しげに話している。よく見えないが山口さんはあまり楽しげではない。相槌をうって、返事してる感じだ。車がギリギリを通り過ぎた。男は守るように山口の腕を引っ張り、抱き抱えるようになった。見つめ合うようになり、男は顔を近づけキスをした。
秋葉はいたたまれず走った。
叫びたい気持ちだった。
何日かして、遠山からラインが、秋葉の、家に行きたいと来た。何度か玄関先で本のやり取りをしている。同じようなのだろうと、OKの返事する。山口さんが、気になってあまり深く考えていない。
次の日曜日、約束通り遠山さんが来た。あさ美容室行ったと思われる整えられた髪型。可愛らしいワンピース姿。少し緊張してるのが丸わかりな表情。
「よ、よおっ」戸惑っていると、「サンドイッチ作ってきた。入ってもいいかな?」
ダメと言える雰囲気は無かった。「どうぞ」部屋に入れた。べたっと正座して背筋を伸ばし遠山は、「昼まで本を読んでいい?」いいよと返事。調子狂ってしまう。アレコレ本棚から出して聞いたり本を広げたりと元気だった。
「サンドイッチ食べよう」とバスケットを開き、ペットボトルの紅茶も出しだ。用意がいい。おいしかった。そういうと、いつでも作るから食べてと答えた。そのあと、深呼吸して遠山は言った。
「気付いてくれてないのはわかってる。私は、前から秋葉くんのこと興味持っていた。好きとか無しでいいから、一緒に、こうして二人で本を読んだり、時々ハンバーガー食べたり、ラインしたり私はしたいと思っている」「‥‥」秋葉は豆鉄砲食らった鳩みたいな顔で固まってる。遠山も顔が真っ赤になって手も震えている。
立ち上がると「へ、返事はあとでいいけら」噛んでる。遠山はバケット持って、帰っていった。
翌日から朝、遠山は電車に乗らなかった。時間を早めているのか分からない。秋葉も少し考えたかった。初めて真剣に遠山のことを考えた。思い返してみれば、遠山がからかったりしてのことではないと分かる。俺はラノベ主人公かよ。大馬鹿野郎だ。気持ちの整理をつけた。
朝いつもより1時間ほど前に駅に着いた。有料駐輪場で待った。程なくして遠山がやって来た。秋葉を見て固まった。「借りる本持っていかなかっただろう」「うん」「いつ来る?」遠山はマジマジと見つめて、「いいの?」「当たり前だろう」
遠山は秋葉の胸元を掴んで、泣き笑いのような笑顔を見せた。
真実の恋 ユッコ @umesann
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