成長途上の人たちによる、人生のちょっとした幕間のようなもの

 恋人に振られたばかりの男子大学生と、その友人であるアクティブな女子大学生の、講義後のちょっとした対話のお話。
 ラブコメです。いやラブコメかしら? 少なくとも「男性主人公の周りに個性豊かな美少女たちが群がるやつ」的な意味でのラブコメではなくて、でもなんとなくラブがコメコメした感じの物語。色恋に思い悩む男女を軸に、でも惚れたはれたのゴリゴリの恋愛ものでなく、あくまで軽妙な対話でもって進んでいくお話です。
 実はお話の筋自体はそんなにラブコメでもないのですけれど(たぶん恋愛ものでもない)、でも登場人物ふたりのキャラクター性と配置がラブコメしているので、読み口としては軽妙というか、結構ライトな感じです。
 視点保持者たる沢木くんの絶妙な普通っぽさに、篠宮さんの饒舌な構いっぷり。どういう関係なのかはすぐに透けて見えるというか、まあ総じてタグにある通りの「じれじれ」感。この絶妙な距離感にじれったさ、そして滲み出る青臭さを眺めてニヤニヤするタイプのお話で、なかなかにやきもきさせられました。
 なんと言うのか、名付けようのない彼と彼女の機微が楽しいです。意地の張り合いというほど衝突しているわけではないし、といって探り合いというほど何かを隠しているわけでもない。強いていうならなんだか気取っているというか、ちょっとした背伸びにも似たわずかな衒い。きっとふたりとも真剣ではあるのだろうけれど、でもそのおかげでかえって茶番めいてしまう上滑りした対話の、そのあまりにも剥き出しの青春っぷり。
 絶妙でした。中高生ほど子供ではないけれど、大人というにはまだ足りない、ちょうどモラトリアムの時期。落ち着いた対話のようでいて、でも実質ただ恋に振り回されるばかりのふたり。あまりにも青春すぎる……。
 特筆すべきは的の絞り方というか、話の内容がただそれだけに集中していること。講義が終わったあと、きっと十分かそこら程度の短い会話。それだけでお話が完結しており、もちろん対話の内容自体はあれこれ変遷していくのですけれど、でも目指すところが一切ぶれないところ。ふたりの会話のやきもきする感じ、というか、ふたりの言葉の向こうにある感情を想像する楽しみ。意味深長だったり何か他の意図が透けて見えそうだったり、それらの寄せては返す波のような揺らぎがたっぷり詰まった、なんともむず痒い青春の一幕でした。まだ道半ばのふたりですけれど、いつの日かハッピーエンドを迎えることを祈っています。